【実話小説】トルクメニスタンに違法滞在した話 〜第一話・ビザ申請〜




トルクメニスタン。

それは、中央アジアに位置する、国土の多くは砂漠に覆われた内陸国である。
かつてはソビエト連邦に属しており、現在は「中央アジアの北朝鮮」とも呼ばれる独裁国家だ。

と聞くと、悪いイメージが頭に浮かぶんじゃないかな。
劣悪な経済状態と生活環境の中、人々は恐怖政治に怯えながら暮らす―――
しかし、実際は全く違っていた。そこに何があり、人々はどのように暮らしているのか。
これは、ボクがトルクメニスタンという未知なる国に滞在して実際に体験した7日間の記録である。


 
こんにちは、モロの飼い主です。
トルクメニスタンで体験した実話小説の続きです。
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さて―――
初っ端から言い訳になってしまうのだけど、今すぐにトルクメニスタン内であったことを書くことができない。
まずはトルクメニスタンに入国する前、ウズベキスタンでの出来事から書こうと思う。

前回書いた通り、トルクメニスタンに入るためにはビザがいる。
そして、そのトルクメニスタンのビザを取得するためには、その前後の国のビザが必要となるということも書いたと思う。
ボクはキルギスという国で、トルクメニスタンに入る前の国であるウズベキスタン、そして出た後に行く予定であるアゼルバイジャンのビザを手に入れていた。
これらを取得するのも一筋縄では行かなかったのだけど話が長くなってしまうので割愛するとして、ボクはウズベキスタンの首都・タシケントでトルクメニスタンのビザを取ろうとしていた。







2015年9月22日、午前5時30分。
ボクはタシケントの宿・Sunrise Caravan Stayのドミトリーで目を覚ますと、出かける支度を始めた。

「ふわ〜、眠い・・・・・・」

ボクは朝方の人間ではない。というかむしろ夜型なので、朝は大の苦手だ。
朝の5時半に目覚めるよりも、眠りについたことの方が多いかもしれない。
ではなぜこんなに早起きをしたのかといえば、トルクメニスタンのビザを申請するためである。

「うわー、けっこう肌寒いなー」

昨日ウズベキスタンへ入国した時はTシャツ一枚でも暑かったが、砂漠の多い内陸国なので明け方は冷える。

「体が冷えちゃうから、走っていくか。こういう時は、この曲だ!」

ボクはイヤホンを耳に入れると、ポケットにあるiPhoneで『ロッキーのテーマ』を再生した。
軽快なトランペットと重厚なトロンボーンで始まるイントロでテンションを上げながら、ジョギングで大使館へと向かう。



「それにしても警察? 軍? の人が多いな・・・・・・」
宿の前の小道から中央分離帯のある大きな道に出ると、まだ6時前だというのに一つ一つの交差点おきに深緑の制服を纏い銃を持った人が立っている。
世界有数の治安がいい国・日本で育ったボクにとっては銃が剥き出しであるだけでぎょっとするのだけど、ウズベキスタンの人たちにとってはこれが日常風景なのだろうか。
そしてボクは、昔読んだ小説の一節を思い出す。

 

「町に警官がとても多いですね。私の経験上、こういう国では油断してはいけません」
「治安の悪さにですか?」
「いいえ。権力の側にです」
キノの旅(8) 『歴史のある国』



実際にこのウズベキスタンでも、警察官が難癖をつけてきて所持金や持ち物を奪っていくということもあるらしい。
発展途上国を旅するにあたって、真に危険なのは治安ではなく権力の側かもしれない。
ボクは目を合わせないようにして、大使館への道を急いだ。



とはいえ生まれてこの方運動経験が滅法ないボクは、大したことないスピードのジョギングと休憩がてらの徒歩を繰り返しながら、15分ほどで大使館の前へと着いた。
時刻は午前6時過ぎ。もちろん大使館がこんなに朝早くから開いているわけもない。
ではなぜこんなに早く来たかというと、事前にこんな話を聞いていたからである。

「タシケントにあるトルクメニスタン大使館では、朝早く名簿に名前を書いて受付をしておかないと、申請をさせてもらえない」
「申請が可能なのは月から木曜日の午前中のみ。時間になると、待っている人がいても閉まってしまう」

こんな話を聞いていたから、ボクは苦手な早起きをしてでも朝早く大使館に来たのだった。
門の前にある詰め所の中に、警備員らしき人がいたので聞いてみる。

「ビザ! イーミャ(名前)!」

ウズベキスタンの公用語はウズベク語だが、旧ソ連の国だったのでロシア語もそれなりに通じる。
2ヶ月半前にロシアに入国した時は「こんにちは」「ありがとう」「ボルシチ」の3つしか分からなかったが、カザフスタン、キルギス、タジキスタンと旧ソ連の国を旅してきて、ボキャブラリーも少し増えた。
それに加えボクは最強の言語である"ボディーランゲージ"の達人である。
今回も「イーミャ(名前)」と言いながら手で書くジェスチャーをしたら、あっさりと通じたようだった。

「これに名前を書きなよ」(推測)

と警備員が差し出されたA4のまっさらな白紙に、ボクは自分の名前を書いた。
彼はボクの名前の左に"1"と書くと、その下に2、3、4・・・と数字を書いていく。どうやら順番待ちの名簿は手作りのようだった。
大使館が開くのは午前9時。他の人のブログによれば9時半頃から受付がスタートするらしい。
ボクは一度宿に戻って、朝食を摂った。









「ごちそうさまでしたー」

昨晩から泊まっているSunrise Caravan Stayの朝ごはんは、とても豪華だった。
俗に"日本人宿"と呼ばれる日本人が多く集まる宿がタシケントには2つあるらしい。
しかし、トルクメニスタン大使館に近いという理由でそのどちらでもない宿を選んだが、その選択は正解だった。
ビュッフェ形式になっているのでハムとチーズをパンに挟んで昼食用のサンドイッチを作ったボクは、再び宿を出るとまず市場へ向かった。
トルクメニスタン大使館でトランジットビザを申請するには、顔写真の他にパスポートと前後2ヶ国のカラーコピーがいる。
白黒のコピーしか持っていなかったボクは、それらを調達する必要がある。
しかし、コピー屋に行こうにも、前日の夕方にウズベキスタンへ入ったばかりのボクは、まだこの国の通貨を持っていなかった。
そして、ウズベキスタンでは銀行などで行う公式のレートと、実際の街中で行う闇両替ではレートが倍近く違う。
そういった理由から、宿の親切なスタッフさんが勧めてくれた、宿から5分の市場へ歩いて向かった。





ボクは地元の市場を見て歩くのが好きだが、今は見て回る時間はない。
事前に闇両替の相場もスタッフさんから聞いていたので、数人に聞いた中でよいレートを示してくれた人と両替を行う。
その時のレートでは1ドルが4850スムであり、この国で最も流通しているのが1000スム札だ。
100ドル札と両替すると、



485枚になって返ってきた。お金持ちの気分になったところで、次はカラーコピーだ。
家にプリンタがある家が少ないのか、中央アジアではよくコピー屋を見かける。
しかし、白黒のみのお店が多かったので、何店舗か回ったところでようやくカラーコピーできるお店を見つけた。
コピー屋といっても実際はパソコンと複合プリンタが置いてあるだけだ。
パスポートをスキャンして取り込み、パソコンのモニター上で確認した後、印刷する。
親切なことに、それぞれ別ページにあったウズベキスタンビザとアゼルバイジャンビザを、トリミングとコピーをを使って1ページにまとめて印刷してくれた。
手間をかけてくれたのに、料金は1枚分だ。

「ラフマット!(ありがとう!)」

とお礼を言って、満を持してトルクメニスタン大使館へ向かう。










必要なものは揃った。後は大使館の中で、申請書類を書くだけだ。
ほどなく大使館へ着き、ボクは警備員の人の元へ向かった。すると、

「もう順番が過ぎている・・・・・・」

ボクが両替やカラーコピーをしていた間に、順番は既に9番まで進んでいた。
一度過ぎてしまうと無効になってしまうらしく、ボクは名簿の一番下――なんと33番――のところに再び名前を書いた。



また順番を飛ばされるわけにはいかないが、さすがに呼ばれるまでにまだ時間があるので、近くにある



ナヴォイ・オペラ・バレエ劇場や、



ウズベキスタンの英雄・ティムールの像などを見て回った後、余裕を持って大使館へ戻った。
しかし、大使館はまだ開いている時間のはずなのに、待ち合いスペースには誰もいない。
警備員の人に訊いてみると、

「今日はもうおしまい」(推定)

と言われてしまった。理由は分からないが、名簿を見ると今日は25番の人のところで打ち切られてしまったらしい。
こうして、トルクメニスタンビザ取得作戦初日は、申請すらできずに終わった。







翌朝、2015年9月23日。
ボクはまた6時過ぎにトルクメニスタン大使館へ行って、名簿の1番上に名前を書いた。
前日は両替とカラーコピーで遅れてしまったが、今回は必要な書類は全て揃っている。
宿に一度戻って朝ごはんを食べた後、この日は9時前に大使館へ戻ってきた。
開館時間は9時のはずだが、9時半頃になってようやく名前を呼ばれた。
荷物は入り口で預けさせられ、パスポートと申請に必要なものだけを持って、昨日は入れなかった大使館へ入る。
中で申請書類を渡されたが、トルクメン語で書かれておりさっぱりわからない。
幸い大使館職員の人(無愛想で少し怖い)が英語が話せたので、片言英語を駆使しながら、1つずつ質問の欄を埋めていった。
その中の一つに、トルクメニスタンに入国する日付を書く欄があった。
発行までには少なくとも5営業日が必要で、国境受け取りができないと言われたので、またこのタシケントへ戻ってこないといけない。
楽しみにしていたウズベキスタンの観光がビザに追われて中途半端になるのは嫌なので、ボクは余裕を持ってウズベキスタンビザの期限最終日、10月14日を開始日にした。
全ての欄を埋めて、申請書類を大使館職員に渡し、

「じゃあ9月30日にまた来て」

と言われて、ボクはその時気付いた。

「ウズベキスタンビザの最終日とトルクメニスタンビザ初日を合わせたら、出入国できる日はその一日限りしかないじゃん!」

ビザの期間を数日間重ねていれば、何かトラブルがあった場合に出入国を翌日に延期することができる。
しかし、ボクはトルクメニスタンビザの開始日をウズベキスタンビザの最終日と同じ日にしてしまったため、出国する日はその一日しかない。
そして、何らかの理由により10月14日に出入国できないと、ウズベキスタンビザが切れて違法滞在になってしまうのだ。

「まぁ、余裕を持った日程で国境近くの町へ着いて、10月14日にちゃんと出国すれば大丈夫か・・・・・・」

しかし、このビザの日付指定のせいで後々大変な思いをすることになるとは、この時は想像すらできなかったのであった。







第二話へ続く
 
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♪ コメント ♪
こんにちは。私は西アフリカのセネガル共和国に住んでいる、アフリカ商会の山田と申します。ブログ村からブログを発見し、いつも楽しく拝見させていただいています。ありがとうございます。

このブログで私が特に好きなところが、他のブログと比べ、非常に体験談・情報・写真が詳細なところです。今回はトルクメニスタンについてですが、おそらくほとんどの人が場所もわからない国について、ご自身の体験も交えながら発信されているので、楽しいです。今後も続編をお待ちしております。

アフリカ商会・山田
  • アフリカ商会・山田
  • 2016/05/26 1:57 AM
山田さん、はじめましてなの!
アフリカにも行く予定だから、いろいろ教えてほしいなの♪

お褒めの言葉をいただけて、とても嬉しいなの♪
トルクメニスタンの小説はまだまだ続くから、楽しみにしていてほしいなの!

お返事ありがとうございます。

もし西アフリカにいらっしゃるようでしたら、ぜひお会い出来ましたら幸いです。
Omotenashiという名前で、こんなゲストハウスもやっています。
良かったらブログネタにでもしていただけたら幸いです。

<ご掲載いただいたメディア様の例>
■産経新聞
http://www.sankei.com/economy/news/160129/prl1601290232-n1.html
■時事通信
 http://www.jiji.com/jc/article?k=000000005.000015854&g=prt
■アフリカビジネスニュース
 http://www.africa-news.jp/news_ap3MXvwi8Y.html
■Africa Quest
http://afri-quest.com/archives/1572
■他のブロガーさんのブログ
http://www.tabidatiouenmassan.com/?p=3964
などなど。
■アフリカ商会インターンブログ
http://africa-intern.com/blog/intern/yakubo/

いつかセネガルでお会いできる日を楽しみに。Bon voyage(良いご旅行を)!

アフリカ商会 代表
山田 一雅

  • アフリカ商会・山田
  • 2016/05/27 11:22 PM
山田さん、コメントありがとうなの!
西アフリカへ行く際は、ぜひともお邪魔しますなの!
コメントしてほしいなの!








   
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