【かいぬし手記】イスラエル人と兵役

【かいぬし手記】イスラエル人と兵役

※ 当記事は2015年8月23日に投稿されたものを、転載したものです。

 

 

どうも、モロのかいぬし、こっけ~です。

モンゴルでいろいろ考えさせられることがあったので、それを書きたいと思います。

 

 

 

モンゴルに着いた初日、宿で同室だったイタリア人・アレーシオから誘われて、チンギス・ハン広場で翌日開かれるお祭りの前夜祭へ行った。
その道すがら、彼が飛行機で知り合ったという、イスラエル人二人・エフロンとナダルが泊まっている宿へ行って、彼らと合流した。
イスラエル。これは世界でも類をみないくらい、複雑な事情を持つ地域だろう。
かじった程度の知識しか持ち合わせないボクがそれについて語るのはやめておくことにして、彼らとビールを飲みに行った時のことだ。

 

 

 

乾杯をした後、他愛もない話をいろいろしていた時、ふとアレーシオがこう尋ねた。

「イスラエルはそこまで人口が多くないのに、旅をしているとあちこちでイスラエル人に会うのはなぜ?」

それに対して、エフロンはこう答えた。

「イスラエルでは3年間の兵役がある。兵役が終わった後に、その時の給料で旅へ出る人が多いんだ」

兵役“。徴兵制のない日本では馴染みの薄い言葉だ。
しかし、イスラエルはまさに戦闘のまっただ中にある。イスラエルの歴史は戦争の歴史と言っても過言ではないだろう。
エフロンは、兵役中の給料は一般的な給料より50%ほど高いことを教えてくれた。
もしかしたら命を落とすことになるかもしれない仕事に対して付けられた50%の上積みは、さながら人一人の命の値段といったところか。

アレーシオはさらに尋ねた。

「君は人を撃ったことはあるの?」

エフロンは答える。

「訓練で的は撃つけど、人は撃ったことないなあ」

そしてこう付け加えた。

「クラスメイトの女の子は、撃ったことあるらしいけどね」

エフロンは詳しい話を始めた。
彼女はどこかの道を見張る任務にあたっていたらしい。
そして、そこを渡ろうと横切る人を撃つのが仕事だったと。

「So, she shot some people.(だから、彼女は何人か撃ったらしいよ)」

そう言いながら、人差し指でトリガーを引く真似をする。

「Like a game.(ゲームのようにね)」

 

 

 

 

それを聞いて、アレーシオの表情が変わった。
エフロンは冗談で言った比喩表現かもしれないけど、実際に人を撃ったことを「ゲームのように」と形容するのに嫌悪感を感じたのだろう。
その表情を読み取ったのか、エフロンは少し弁明した。

「僕らは与えられたことをしているだけで、何も間違ったことはしていないよ」

任務として与えられたことを遂行するのは、”間違ったこと”ではないのだろうか。
彼いわく、兵役へ参加しない人間は罰せられるらしいから、イスラエル人として生まれた以上、他に選択肢はないのだろう。
だから、彼は”生きていくため”に、他人の命を奪う行為は正当なものなのかもしれない。
誰だって自分の命と、小さい頃から敵国だと教わってきた赤の他人の命だったら、前者を選ぶに決まっている。

話を続けていくうちに、アレーシオがこうつぶやいた。

「でも、たった3年間(just 3 years)我慢すれば大金が入るなんて、それもいいかもね」

すると、今度はエフロンの表情が変わった。

「”たった”3年間だって? (JUST 3 years?)  “たった”じゃないよ!(It is NOT just!)」

少し苛立ったエフロンに対して、アレーシオは謝っていた。

兵役はよいお金になる。実際にそれを使って旅をしているイスラエル人は多くいる。
しかし、いくらまとまったお金が入るからって、エフロンも喜んで兵役に参加しているわけじゃない。
人生のうちの3年間を国のために捧げなくてはいけないというのは、彼にとってやはり嫌であったらしい。

 

暗くなってからチンギス・ハン広場へ戻ると、光り輝いたプロペラをゴムで空中へ飛ばすおもちゃが売られていた。
エフロンは、これは面白そうだ! とはしゃいで、お店の人からそれを買って遊んでいた。
しばらくして、満足したと言って、通りすがりの女の子におもちゃを渡していた。

 

 

けど、その子はうまく飛ばせなかったので、エフロンはなんともう一つ買って、自分で実演しながら遊び方を教えていた。
彼女が飛ばせるようになると、彼は新しく買った方のおもちゃも彼女の母親に譲っていた。
彼がボクらのところに戻ってきて、こう言った。

「あのおもちゃ、たった1000トゥグルグ(60円)だからね、プレゼントしたよ」

エフロンは戦争中の国・イスラエル出身で、人を殺すための訓練を受けてきたこともある。
しかし、ボクの目の前にいる彼は、紛れも無いただの優しい好青年だった。

「○○人」というレッテルを貼ることは容易い。
多くの日本人はシャイなんだろうし、イタリア人は陽気で、ブラジル人はお祭り好きだ。
しかし、考えてみれば当たり前の話だけど、全員がそのステレオタイプ通りとは限らない。
国籍や人種というバイアスがかかった目で人となりを判断しないようにしようと改めて思った。

 





また「もろたび。」に来てほしいなの♪
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※ 2018年3月4日、追記

この記事を書いた後、ボクはユダヤ人として捉えられたアンネ・フランクの家、ユダヤ人が虐殺されたアウシュビッツ強制収容所、
彼らを逃がすために尽力した杉原千畝記念館に訪れて、ユダヤ人が迫害されてきた歴史を見た。
そして、イスラエルとパレスチナにも行って、今度はユダヤ人がアラブ人を迫害している所も見た。
それらを見て思ったことを、また新たな手記にまとめたいと思う。

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