【中編小説】ウサギとカメ 2学期:「うさぎ うさぎ なにみてはねる」

【中編小説】ウサギとカメ 2学期:「うさぎ うさぎ なにみてはねる」

 

こんにちはなの!モロくんなの!

こっけ~:「モロのかいぬし、こっけ~ですー。今回は小説を載せるよー」

 

※ 前回の話はこちら。

 

 




 

 

 

ウサギとカメ

 

 

 

 

 

2学期:「うさぎ うさぎ なにみてはねる」

 

 

 

 

中学生最後の夏休みも終わり、2学期になった。
体育会系の部活をやっている人も7月の大会を最後に部活を引退し、受験戦線に突入してくる。
志望校に送る内申書も、実質この2学期が最後だと言っても過言ではない。
そういうわけで、受験生にとってももっとも過酷な時期。それが2学期。
「はー、受験ムードって肩こるわねー」
1時間目の後の休み時間、クラスメイトで友達の滝沢 ひかりが話しかけてきた。
「ひかりは私立の単願でしょ? よっぽどのことがない限り受かるじゃない」
単願というのは一つの学校しか受験しない、ということだ。
合格したら必ず入らなくてはいけない代わりに、合格率はぐんと跳ね上がる。
「まーねー。やっぱり人生楽できるときに楽しなきゃ!」
「そんなこと言ってると、将来きっと後悔するわよ」
「ウサギこそ、今のうちに遊んでおかないと歳とった後に後悔するかもよー?」
ああ言えばこう言うひかり。私は一つため息をついた。
「あ、ところでさー」
何も気にしないひかりは話を続ける。
「亀井君って、高校はどうするか聞いてるの?」
「さぁ?」
「さぁって・・・・・・幼馴染みでしょー?」
「あのね、付き合いが長いってだけで、幼馴染みは何でも知ってるわけないでしょ?」
そうは言うものの、私はカメの志望校を知らない。あまりそういう話をしたことがないからだ。
何をするにも遅いあいつのことだから、もしかしたらまだ何も考えていないかもしれない。
十分にありうる。これは葉っぱをかけてやらないといけない。私は昔からカメの保護者のような役割なのだから。
そんなことを考えていた矢先、ちょうどカメが目の前を通りかかったので私はカメに尋ねた。
「そういえばカメ、あなたどこの高校へ行くつもり?」
「あ、うさぎ~。おはよ~」
「あいさつはいいから私の問いに答えなさい。どこの高校へ行くか決めてるの?」
カメは一瞬、きょとんとして、そして答えた。
「高校? 朝日ヶ丘高校にしようかなって思」
「朝日ヶ丘!? 県内で一番偏差値高い高校じゃない! あなた正気なの?」
私は思わず急ぎこんで尋ねた。朝日ヶ丘高校といえば定期テストで学年順位が5位以内の人が目指すような、そしてそのレベルの人でも入るのが厳しいような高校だ。
それなのにカメの成績はいつも平均以下。冗談で言っているとしか思えない。
「うん、正」
「だってあの朝日ヶ丘よ? いつも私に宿題を借りに来てるあなたが入れるわけないじゃない」
「いつもじ」
「大体あなた今テスト何位よ? 偏差値は? 内申は?」
「テストの順位は24位で、偏」
「24位なんかじゃ朝日ヶ丘なんて・・・・・・って、24位?」
私は自分の耳を疑った。私たちの学年は約250人いるから、24位といえば上位20%に入る。
「あなたいつからそんなに頭良くなったのよ。前は平均点すら取れてなかったでしょう?」
「いつからって言われてもなぁ~・・・・・・」
「っていうか私が32位だから抜かれてるじゃない。いつの間にそんなに・・・・・・」
「勉強頑張ったから~」
何事でもないように言いのけるカメ。
「カメのくせに・・・・・・カメのくせに、生意気よ!」
「ごめんね~」
頭をぽりぽり掻くカメを見ていると、イライラが増す。
「まぁまぁウサギ。亀井君だって最近頑張ってるんだからさー」
ひかりが私とカメの間に割って入った。私はイライラの矛先をひかりに向ける。
「なんでひかりがそんなこと知ってるのよ」
「何をおっしゃるウサギさん。そんなの誰だってわかるじゃん。授業中も真面目だし、授業後は先生に質問しに行ってるしー」
「・・・そうなの?」
私はカメの方を見ると、恥ずかしそうに頭を掻いていた。
「でも僕なんてまだまだだよー」
「・・・・・・そうよ。24位なんかじゃ朝日ヶ丘なんてとてもじゃないけど入れないわよ」
私は鼻を鳴らす。朝日ヶ丘はそれだけ本当にすごい高校なのだ。でもひかりは
「わからないよー? このままだと亀井君、次の中間でさらに順位上げるんじゃないー?」
「そんなこと・・・・・・」
「あるわけない?」
私は言葉を飲む。既に100位代から順位を大きく上げているカメのことだ、ないとも言い切れない。
「・・・・・・でも、いくらなんでも朝日ヶ丘は、無理よ」
その時、始業を告げるチャイムが鳴って、私たちはそれぞれ自分の席に戻る。
私は自分の席について、カメの方を見た。カメは教科書とノートを机から取り出して、授業の準備をしている。
・・・・・・はっきり言って、ショックだった。
カメにテスト順位で負けていたことではない。
カメが朝日ヶ丘高校を目指しているからではない。
それらを私が全く知らないことだった。
ひかりですらカメが一生懸命勉強している事を知っていたというのに。
カメはいつも私を追っかけて来ていた。私の後ろにいた。
だけどいつの間にかカメが、私の前にいただなんて。
「カメのくせに・・・・・・カメのくせに・・・・・・!」
イライラする。
カメにテスト順位で負けていたことではない。
カメが朝日ヶ丘高校を目指しているからではない。
それらを私が全く知らなかったから。

 

 

 

「よし、じゃあ次の問題を・・・・・・宇佐美、解いてみろ」
「え? あ、はい!」
先生に突然指名されて、私は慌てて立ちあがった。私としたことが、授業中に他ごとを考えていたみたいだ。
黒板には
「この空欄に入る関係代名詞は目的格だからだからwhom・・・いや、違う。人じゃないから、えっと・・・・・・」
私は小さく呟いて、頭の中で解答を探す。
「whichは主格だし・・・・・・えっと、その」
「どうした? わからんか?」
先生に答えを促され、私は白旗を上げた。
「すいません、わかりません」
「じゃあ、隣の滝沢」
「わっかりませーん」
先生に当てられたひかりは、立ちあがるまでもなくギブアップした。
「まったく・・・・・・お前らちゃんと授業聞いてたか? わかるやつ、いるか」
その時、離れた席で手が上がった。先生もそっちを見る。
「お、亀井か。よし、答えてみろ」
「はい。whichです」
「そう、正解だ。物の場合、関係代名詞はwhich-whose-whichとなる。これは受験にも出やすいから、ちゃんと覚えとけよ」
私はシャーペンを机に置いた。今までは解けていたはずの問題を間違えてしまい、私は項垂れる。
関係代名詞は夏休みの夏期講習でも重点的にやって、完璧にしたと思っていたのに。
それにしても、カメは挙手までして簡単に答えていた。しかも、私が解けなかった問題を。
それがなんだか、カメに実力の差をまじまじと見せ付けられたようで、それがなんだかとても悔しい。
「・・・・・・さみ、宇佐美!」
「は、はい!」
名前を呼ばれて顔を上げると、クラスメイトが私の方を見ていた。どうやら先生が名前を呼んだのになかなか気付いていなかったらしい。
「どうした? 具合でも悪いのか?」
「いえ、大丈夫です」
「そうか。ならちゃんと聞いとけよ。今が一番重要な時期だぞ」
「はい、すいません」
言われなくてもわかってる。でも、今は集中できない。
カメは、朝日ヶ丘高校を受験する。あの県内トップの偏差値で、毎年東大に現役合格を送りこむ、あの朝日ヶ丘高校に。
以前問題集を買いに本屋に行った時に興味本位で一番難易度の高い英語の問題集を開いてみたが、知らない単語ばかり出てきて読むことすらままならなかった。
しかし、朝日ヶ丘高校を受験しようとする人なら、あの問題も当然解くのだろう。つまりは、カメも。
そういえば2学期に入ってからは、カメは私に宿題を借りに来なくなった。
それもそうだ、何しろカメは既に定期テストで私より高い順位にいる。先程のように、私の解けない問題だって解けるのだろう。
私の後ろをずっと歩いてきたはずのカメは、いつの間にか私の前にいた。
今まで相手にもならなかったカメに、差をつけられていた。
悔しすぎる。

 

次の中間テストで、私は自己ベストの20位を取った。
そしてカメは、11位に躍進した。

 

受験まで、あと少しだ。

 

 

 

 

続く

 



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