【名曲小説化】ワンルーム・ディスコ

【名曲小説化】ワンルーム・ディスコ

 

こんにちはなの!モロくんなの!

こっけ~:「モロのかいぬし、こっけ~ですー。土曜日は小説の日~」

Perfumeさんの歌を小説化してみたなの!

 

 




 

 

 

遠い空の向こう キミは何を想うの
多分できるはずって 思わなきゃしょうがない―――

 

 

 

 

 

 

新しい街に来て、もうすぐ1週間が経つ。
空っぽの棚と机、そして箱詰めされた重い荷物がそのまま置かれている。
もともとあまり物を持たない私の部屋は、同世代の女の子のそれと比べればなんとも殺風景な事だろう。
でも私にとっては物が少ないほうが都合がよい。なぜなら、私はよく引っ越すから。
今回の引っ越しを聞いた時は、とても悲しかった。
青陽学園高校には大好きなトモダチがいっぱいいるし、それに何より
「翼・・・・・・」
引っ込み思案だった私を、人との付き合いが苦手だった私を変えてくれた、私の恩人。
中田 翼と離れることが、とても辛かった。
私は翼に引越しすることを告げるのが辛くて、何も言わないまま別れようとしたことがきっかけで一度は喧嘩になった。
でも、周りのみんなの応援のおかげもあり、引越しの前日に仲直りして、一緒に花火を見るという去年交わした約束も守ることができた。
引越しの当日は翼が駅まで送ってくれて、電車で離れていく私に向けて手を振り続けてくれた。
私は目を閉じるたび、最後の光景を思い浮かべる音ができる。
そのおかげで私は、翼と離れ離れになったけれど、それでも気分は軽い。
「んー・・・!」
私はベッドから起き上がると、伸びをした。
数歩歩いて壁に近づくと、カーテンと窓を開ける。
朝日が部屋いっぱいに差し込み、爽やかな風が部屋に流れ込む。
東北地方にあるこの街は、夏休み直後の9月上旬といえども朝は涼しい。蒸し暑かった豊徳市とは大違いだ。
「・・・・・・」
私は窓から外を眺めた。この家に引っ越してきて1週間が経つが、未だに見慣れない風景だ。
大都会の豊徳市にた頃は窓から住宅しか見えなかったけど、今は田んぼが一面に広がっていて、遠くには青い山が見える。
のどかなはずの風景なのに、ちょっと落ち着かない。
「けれど、そのうち楽しくなるでしょー」
私は自分にそう言い聞かせた。ここでの暮らしにだって、きっと慣れるはずだ。

 

 

 

 

ワンルーム・ディスコ  by Perfume

 

 

 

 

今日は9月6日、土曜日。
2学期から新しい高校へ転入した私の、最初の1週間が終わった。
学校に行く初日こそ、新しい場所でうまくやっていけるかな、と緊張していたけど、クラスメイトの何人かとも仲良くなれたし、順調なスタートだと言えるだろう。
「こうやって人と話せるようになったのも、みんなのおかげだねー」
私は机の上の写真に向かって話しかける。
あやめちゃんたちがお別れのときにくれた二つの写真立て。一つにはいつも一緒だった4人で写った写真、そしてもう一つには翼と二人で写った写真。
少し恥ずかしそうな翼の腕に、満面の笑みで抱きついている私。
「・・・・・・よし」
私は頬を両手でぱしぱしと叩いた。今日はこの街に来て最初のお休みの日。やることはいっぱいある。
まずは箱に詰められたままの荷物を出さなくてはいけない。
部屋を片付けたら、買い物に出かけよう。いろいろと必要なものがある。
そして、翼に手紙を書こうと思う。私は元気でやっていることを、翼に伝えたい。
私は部屋の窓から空を見上げた。
遠い空の向こう、キミは何を思っているのだろう?
私は信じている。信じているけど、本音は少し怖い。
翼のことがじゃない。私自身が、だ。
私は翼にいつも甘えていた。だからこそ、翼と離れ離れになったら私はどうなるかわからない。
この1週間はなんとか無事に過ごせたけれどそれでも、もし翼がいてくれたら、と思うことが何度もあった。
そんな私に遠距離恋愛などできるのだろうか?
「・・・・・・ダイジョブダイジョブ」
私は自分に言い聞かせる。できるはずって思わなきゃ、しょうがない。

 

 

 

 

「はわー・・・・・・」
頭にシャワーを浴びて、思わず声が出てしまった。
昨日の夜は翼と電話していたらいつの間にかかなり遅い時間になってしまい、お風呂に入り損ねてしまった。
さすがにそのまま買い物に行くのも気が引けるので、今こうしてシャワーを浴びているのだった。
一度シャワーを止めて、シャンプーのポンプを押す。
「・・・・・・ちょっと二の腕、たるんできちゃったかなー?」
自分の腕を見て呟いた。先週はスター夏味堂のケーキを2回も食べたのに、全然運動していなかったからかもしれない。
昔はそんなこと気にしなかったけど、カロリーを気にする美沙ちゃんを見ているうちに、いつからか私もカロリーが気になるようになっていた。
心もち二の腕を大きく動かすようにして髪を洗う。お風呂場にわしゃわしゃという音が響く。
短髪なのですぐに洗い終えた私はシャワーで流そうとした。しかし
「ど、どこかな・・・?」
シャンプーをしているので目を閉じているのだけど、そのせいでシャワーのバルブがどこにあるかわからない。
まだ前の家でのお風呂場の感覚が残っているのだろう。
「けれど、そのうち慣れてくるでしょー」
私は努めて明るく言った。前の街のことを思い出して、寂しさを感じるよりも前に。
薄目で私はバルブの位置を確かめて、シャンプーを洗い流す。
前向きに行こう。後ろには何もないのだから。

 

 

 

 

お風呂場から出て、私はタオルを頭にかぶせたまま自分の部屋へ戻った。CDコンポをつけて、音楽を流す。
特にお気に入りの歌手がいない私は、人気のあるJ-POPをよく聴く。
今流れている曲も、有名な女性グループの軽快なテクノポップだ。
音楽をかけながら、今日これからの計画を練ることにした。
「えっとー、買わなきゃいけないものはー」
少し上を見ながら、今必要なものを思い出す。
「そーだ! 新しいノートが欲しいんだったー」
今まではテスト前になったら涼子ちゃんに写させてもらっていたけど、今度からは自分でやらなくちゃいけない。
そんなわけで文房具屋、もしくは100円ショップに行こう。後はドラッグストアとスーパーにも行かなくちゃ。
行く場所を決めていって、ケーキ屋さんやカラオケに行くのとは違う、生活感あふれるお店のラインナップに苦笑する。
今日は生活用品などを買いに行くのだから、面白いことがなくても仕方ないのだけど。
「ちょっぴり退屈な一日だねー」
そう呟く私に対抗するかのように、元気に鳴り響くテクノポップ。
私はそのリズムに揺られたくなった。少しでも気分を上げたくて。
無茶苦茶に踊っていたら、なんとなく楽しくなってきた。そして歌う。

「ワンルーム・ディスコ!」

 

 

 



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