【日常短編小説】ある日の4人 ~7月~

【日常短編小説】ある日の4人 ~7月~

 

こんにちはなの!モロくんなの!

 

こっけ~:「モロのかいぬし、こっけ~ですー。土曜日は小説の日!」

 

今回は、かいぬしさんが学生時代に書いた短編小説をお届けするなの!

 

※ 短編シリーズの目次はこちら

 

 

 

 

 

ある日の4人 ~7月~

 

 

 

 

「あ゛つ゛い゛よ゛~・・・・・・」
「・・・・・・あやめ、もうそれは聞き飽きたわ」
「だって暑いんだもん~・・・・・・。美沙ちんは暑くないの~?」
「私だって暑いわよ」
「ねぇ、やっぱ先に教室戻っちゃダメかな?」
「涼子との約束を破るつもり?」
「だよね~・・・・・・。あ゛~、暑いーーーー!!!!
「あやめうるさい!」
「あぁ、叫んだら余計暑くなった・・・・・・」
「怒ったら私まで暑くなったわ・・・・・・」
「・・・・・・にゃあ」
「・・・・・・はぁ」
「あ、あやめちゃんと美沙ちゃんだー。こんなところでどうしたのー? そんなまるで暑くてぐったりしてるような顔してー」
「・・・・・・神様、今大親友の葵ちんに一瞬だけ殺気が湧いたことをお許しください」
「葵、暑くないの?」
「えー、暑いよー! 暑くて暑くて死にそうだよー!」
「それにしては言葉と表情が違うんだけど・・・・・・」
「ボクって夏生まれだからかな? 暑いのスキなんだー!」
「そういえば葵の誕生日って来月だったわね」
「うん、8月生まれだよー」
「名前からして夏って感じだものね」
「ん? 美沙ちん、それどういうこと?」
「あら、知らないの? 葵のフルネームは日向 葵。文字が少し入れ替わるけど”向日葵”って書いて”ひまわり“って読むのよ」
「そなんだ! 知らなかったにゃ~」
「なんかボクが生まれた日、病室からひまわりの花畑が見えたからそう名付けたんだってー」
「へ~。あ、花の名前ってことはあたしと同じだね~」
「そうね、あやめも”菖蒲“だものね」
「漢字変換ありがと~。それにしてもいいなぁ葵ちん、暑いの好きで・・・・・・」
「あやめちゃんは寒い方が好きなのー?」
「ううん、寒いのも嫌い~。春の花粉も、秋の残暑も嫌い~。地球はあたしの敵だ~!
「貧弱ね」
「あはは。ところで二人はこんなところで何してるの? 暑いのにわざわざ外にいてー」
「実はさっき涼子ちんに頼まれごとされちゃって~」
「頼まれごと?」
「えぇ、弓道部の道場から運びたいものがあるから手伝ってって」
「そっかー、大変だねー」
「こうなったらここを通ったが最後、葵ちんも道連れだ! 葵ちん、あたしたちを手伝うんだ!」
「いいよー」
「そんなこと言ったって無理やりにでもやらせ・・・ってにゃ? いいの~?」
「うん、トモダチが困ってたら助けるのが当たり前でしょー」
ぐはっ、葵ちんそんなまっすぐな瞳であたしを見ないで! 自分がちっぽけで汚い人間に思える・・・!」
「助かるわ葵、ありがとう」
「いえいえー」
「すまない、待たせてしまって」
「涼子ちん遅いよ~!」
「悪かった、ちょっと手間取ってしまって。む? 葵も来てくれたのか?」
「たまたまここを通りがかって、私たちを手伝ってくれるんですって」
「そうか、すまないな。さて、運んでほしい物というのはこれなんだ」

「これは・・・扇風機?」
「うむ。部室で使っていたのだがこのたび新しく買い替えることになってな。せっかくだから古いものを教室にもらおうと思ったんだ」
「でもボクたちの教室はエアコン入ってるよー?」
「だがな、エアコンと同時に扇風機を回すと冷気が循環して電気代が削減できるんだ」
「電気代って・・・・・・。あたしたち空調費払ってるんだから、電気代なんて気にせず使いまくってやればいいのに~」
「だがよりよい学校を創るためにはこういう小さなところから始めるべきだと思ってな。浮いた費用が他に回せるようになる」
ぐはっ、涼子ちんそんなまっすぐな瞳であたしを見ないで! 自分がちっぽけで汚い人間に思える・・・!」
「さすが涼子ね、次期生徒会を目指してるだけあるわ。さて、運びましょうか」
「うむ、扇風機は四台あったのだが葵が来てくれたおかげでちょうど一台ずつ運べるな」
「よーし、それじゃあレッツゴー!」

 

 

 

「教室に着いたー!」
「エアコンの冷気が涼しい~、文明の機械サイコー!
「涼子、先生の許可は取ったの?」
「うむ、すでにもらってある」
「さすが涼子ちん、仕事が早い!」
「じゃあ早速設置しましょう。コンセントはちょうど教室の四隅にあるわね」
「よーし扇風機、セット! ポチっとにゃ♪」
「動いた動いたー!」
 「あ゛~~~~~~~~
「・・・・・・あやめのことだから絶対にやると思ったわ」
「にゃは、扇風機の前で『あ゛ーー』ってやるのは日本の夏の醍醐味でしょ~」
「この歳になってそんなことするのはあやめだけ――」
「だよねー! ボクも扇風機見たらついやっちゃうよー」
「さっすが葵ちん、話がわかる!」
「・・・・・・あなたたち、本当に似た者コンビね」
名コンビだって! あやめちゃん」
「いや、名コンビとは言ってないわよ」
「じゃああたしたちコンビ組む? 天下取っちゃう?」
「いいねいいね!」
「それじゃあ早速練習行ってみよう~」
「うん!」
「はいはいはいどうも~、あやめで~す」
「葵でーす」
「二人合わせて~・・・・・・えーっと・・・・・・」
「あやめも葵もイニシャルがAだから『ダブルエー』なんてどうかしら?」
「美沙ちんナイス! はい、二人合わせて――」
「「ダブルエーです!」」
「いいね~、これ! 葵ちんサイコー!」
「あはは、それほどでもー」
「幸せな二人ね」
「よし、最後の扇風機も問題ないようだな。三人とも手伝ってくれて感謝するぞ」
「いいってことよ~。涼子ちんのためならえんやこら~」
「もう、調子いいわね」
「それほどでも~」
「褒めてない!」
「葵も手伝ってくれてありがとう。たまたまあの場を通りがかったらしいが、自分の予定はよかったのか?」
「はへ? 自分の予定? ・・・・・・うーん、なんだっけ? 忘れちゃったー」
「忘れるくらいだから大した用事じゃないのよ、きっと」
「それもそうだねー」
「ねぇねぇ! 話変わるけど夏休み4人でどっか行こうよ~!」
「ボクも賛成!」
「夏休みねぇ・・・・・・。私は野球部のマネージャーの仕事があるから、少なくとも夏の大会が終わるまでは抜けられないわ」
「どうせすぐに負けちゃうよ~」
失礼ね! これでも青陽学園高校野球部は県内でも四強の一角で、甲子園を狙える位置にあるのよ? キャプテンの桐生先輩なんてプロのスカウトからも――」
「わ、わかった、ごめんなさい~・・・・・・」
「わかればよろしい」
「でも美沙も入れて四人揃って外出したいしな、大会が終わるまで待つとするか」
「そうしてもらえると嬉しいわ」
「ところでどこか行きたい場所はあるのか?」
「あたし山に行きたい!」
「ボク、海に行きたい!」
「にゃ!?」
「はへ!?」
「むむむ、葵ちん、あたしたちいいコンビだと思ってたけどどうやら思い違いだったようね・・・・・・」
「あやめちゃんこそ、気持ちはボクと一心同体だったと思ってたのに・・・・・・」
「夏はやっぱり山だよ! 涼しい森の中、川の水で冷やしたスイカを食べるのが夏ってもんだよ!」
「違うよー、海だよー! 海水浴して、ビーチバレーして、海の家でかき氷食べるのが夏だよー!」
「いいや山! 牧場に行って馬に乗ったりできるんだよ~!」
「海だもん! 砂浜でお城作ったりできるもん!」
「山!」
「海!」
やま~!
うみー!
「YAMA!」
「UMI!」

「ちょ、ちょっと二人ともなんかおかしなことになってるわよ」
「「美沙ちゃん(ちん)は黙ってて!」」
「えぇ!? は、はい・・・・・・」
「山!」
「海!」
「山!」    「美沙、ほうっておこう。私たちは口を挟めそうにない」
「海!」    「そうね、そのうち勝手に終わるかしら」
「山!」    「それにしてもあの二人はよく似ているな」
「海!」    「そうね、今もまるで合わせ鏡を見ているみたい」
「山!」    「私たちはあの二人と違って、冷静に大人の対応をしような」
「海!」    「えぇ、私たちまであの二人のペースに巻き込まれたら大変だわ」
「山の方が絶対いいよね、美沙ちん!」
「海の方が行きたいよね、涼子ちゃん!」
「きゃ!」
「む!」
「こうなったら残りの二人に決めてもらおうよ!」
「いいよ、恨みっこなしだよー!」
「美沙ちん、涼子ちん、山と海どっちがいい? やっぱり山だよね!?」
「あ、ずるい! 美沙ちゃん、涼子ちゃん、海って言って!」
「黙ってって言ったり、答えてって言ったり勝手ねぇ・・・・・・」
「仕方ない、美沙。私たちの意見で決着がつくなら答えるしかあるまい」
「そうね、じゃあ二人とも、決まっても文句を言わないって約束してね」
「わかった!」
「うん!」
「それじゃ答えるわね、行き先は海にしましょう」
「やったー、美沙ちゃんありがとー!」
「そ、そんにゃあ・・・・・・」
「ちょっと待ってくれ!」
「あら、どうしたの、涼子」
「なぜ海なのだ。私はてっきり山と答えるのだと思っていたが」
「え? 涼子は山に行きたいの?」
「無論だ。むやみやたらに肌を露出するふしだらな海辺よりも、暑さを避けることのできる山に行くのが”大人の対応“ではないのか?」
さすが涼子ちん、大人! 海を選ぶなんて美沙ちんはあたしよりおこちゃまだね~!」
「な・・・! 言わせてもらうけどね、昔から夏の風物詩は海って相場は決まってるのよ。暑いから山だなんて、そんなの大人じゃなくて中高年の発想だわ」
「む、美沙は私やあやめが年寄りくさいと言いたいのか」
「あら、よくわかってるじゃないの。弓道は屋内でやるけれど、その点私は野球部で毎日炎天下にいて鍛えられてますからね」
「その理由は解せんな。弓道は極度の集中力を必要とする競技だ。それに比べると美沙はマネージャーで雑用をしているだけではないか」
「マネージャー業は大変なのよ。ユニフォームの洗濯、部室の掃除、試合の記録、選手のマッサージ、やることはいっぱいあるんだから!」
「それらが雑用だというのだ。競技と一緒にしないでもらいたい」
「雑用雑用って言うけどね、マネージャー業は野球部の浮沈に大きく影響を与えるのよ。高校野球、甲子園は高校生の花形! それに比べて弓道なんて競技人口はいくらいるのかしら?」
「弓道は野球に比べれば競技人口は少ない。それは否めない事実だ。しかし私は一競技者として誇りを持っている。自身が競技しない者とは違う」
「私だってマネージャーを誇りを持ってやっているわ。野球を実際にグラウンドでプレイするのは選手だけど、彼らが活躍するためには裏方のスタッフが陰となっているからこそよ」
「・・・・・・葵ちん、なんかもめてるね~」
「うん。美沙ちゃんと涼子ちゃんはボクたちよりもすごく大人っぽいと思ってたけどー」
「あれじゃあたしたちと変わんないね~」
「そーだね」
「っていうかそもそも山か海かの話じゃなかったっけ~?」
「あはは、どこか飛んでっちゃったみたい。あ! ひらめいたんだけど海と山が両方あるところに行くっていうのはどう?」
「葵ちん、ナイスアイディア! その手があったか~」
「ところで二人の言い争いはいつ終わるんだろー」
「ん~、止めたほうがいいかにゃ? ・・・・・・おーい美沙ちん、涼子ちん」
「「あやめは黙ってて!!」」
「うにゃぁ!? は、はい・・・・・・」
「追い返されちゃったねー」
「追い返されちゃったよ~」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「ほっとこっかー」
「それが一番無難だね~」
「ところでさっきから何か忘れてる気がするけど、なんだったっけなー・・・・・・」
「ん~? さっきの用事? まぁそのうち思い出すんじゃない~?」
「そーだねー」

 

 

「あ、暑い・・・・・・。葵が『翼、体育委員会の仕事でカラーコーン運ぶ仕事があるから先に外行ってて』って言ってたのに・・・・・・」

 

「暑いなぁ・・・・・・。まさか器具庫の鍵をとってくる途中にそれを忘れるわけねぇよなぁ・・・・・・」

 

「忘れるわけ、ないよなぁ・・・・・・」

 

「暑い・・・・・・」

 

 

 

 

おまけ

 

登場人物紹介 : 神楽 美沙


(昔、かいぬしさんの小説を読んだトモダチが書いてくれたなの!)

 

こっけ~’s メモ

「ある日の4人」のメインキャラクターの1人、神楽 美沙です。
文武両道、眉目秀麗、家事万能という非の打ち所がないスーパーウーマン。
勉強も部活(野球部マネージャー)も美容も、全てにおいて手を抜かない大変な努力家。
しかしそんな彼女もこの4人の中では、ただのツッコミ役と化しているのが残念なところ・・・・・・
後藤 雅志という幼馴染がいて、稀に登場しています。

 

 



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