「ふふふ、ゆうべはお楽しみでしたね」【屋上・5話】

「ふふふ、ゆうべはお楽しみでしたね」【屋上・5話】

 

今日から6月なの! モロくんなの!

こっけ~:「モロのかいぬし、こっけ~ですー。今回は小説だよー」

 

※ 前回の話はこちら。

 

 

 

 

 

屋上・5話

 

 

 

 

「ふふふ、ゆうべはお楽しみでしたね」

 

 

「いや、その言葉の使い方は間違ってるぞ」
月曜日の放課後。
今日も今日とて、あいつは飽きもせず屋上にやって来た。
・・・まぁ、それは俺も同じなんだけど。
「えー! だって私、昨日はすっごく楽しかったですもん!」
・・・まぁ、それは俺も
「って何考えてんだよ、俺」
「へ?」
「あ、すまん、何でもない」
自分のモノローグへのつっこみが思わず口に出てしまった。
「それにしても、先輩も変わりましたね」
「どこがだ?」
「だって、以前だったら私に『すまん』なんて絶対に言わなかったですよ」
言われてみれば確かに、こいつが来て当初の頃、俺はずっと無視を決めこんでした。
それが、いつの間にかしぶしぶ返事をするようになり、さらにはいつの間にか普通に会話するようになった。
「お前・・・さては、魔法使いだな?」
「何言ってるんですか、この世に魔法なんて存在するわけないじゃないですか」
そりゃそうだ。うちではファンタジーものは扱ってない。
「全部計画のうち、戦略の勝利ですよ」
何この人、超怖い。
「せ、先輩は・・・昨日ので、デート、楽しくなかったですか・・・?」
あいつはそう言うと、屋上のフェンスの向こうに視線を逸らした。
普段はあれだけ内角を攻めてくるのに、というか最早デッドボールを当ててくるのに、時折弱気な顔を覗かせる。
「そんなギャップが、この美少女の魅力だ」
「いや、何勝手に人のモノローグ付け足してんの。っていうか自分で美少女って言うなし」
「でも、客観的に見て、上の中ぐらいはあるかと思うんですが、どうでしょうか」
「中途半端に自己評価高いな。性格の悪さを加味すると、せいぜい中の上くらいが関の山じゃねぇか?」
「つまり、黙っていたら可愛いってことですね!」
「ポジティブシンキング!」
小気味いいテンポで会話が進んでいく。
「それになかなかどうして、性格も捨てたもんじゃないですよ? 明るくて前向き、それでいて一途の優良物件です。ウィットに富んだジョークからエッジの効いたツッコミまで完備。一家に一台いかがですか?」
「押し売りも甚だしい。訪問販売員とか向いてるんじゃね?」
「この度はお買い上げありがとうございます!」
「クーリングオフを申請する」
「本製品はノークレーム・ノーリターンです」
「お前のメンタルは起き上がりこぼしか!」
打てば響くように返ってくるのが心地よい。
昨日の罰ゲーム(こいつの言うところのデート)でも、特に無理せずともずっと会話が続いていた気がする。
いわゆる、一緒にいても楽ってやつか。
「・・・・・・なぁ」
俺はくすくすと楽しそうに笑うあいつに声をかける。
「俺なんかといて、楽しいか?」
正直に言って、俺はあまり人付き合いが得意ではない。
べったりとくっついているのは面倒くさいし、一人でいるほうが楽だ。
「うーん、そうですね・・・」
あいつは顎に手を当てて考え込む仕草をする。
「楽しいか、楽しくないかで言えばーーー」
俺は生唾をごくっと飲み込む。
「先輩をいじってるときは、まごうことなく至福の時間ですね」
「めちゃくそ楽しんでるじゃねえか」
全く、年下のくせに先輩いじりとか、生意気にも程がある。
「先輩はどうですか?」
「え?」
「先輩は、私といるのは楽しいですか?」
同じ質問を切り返されて、俺は答えに窮した。
俺は、こいつといるのが楽しいんだろうか。
「うーん、そうだな・・・」
後ろ髪をがしがしと掻きながら考える。
「楽しいか、楽しくないかで言えばーーー」
あいつがじっとこっちを見つめるので、俺は目を逸らした。
「・・・・・・6対4でぎり楽しい、かな」
「わりと接戦だった!」
あいつはシェーのポーズをした。いや、時代よ。
「えー、もっと素直になってくださいよう。昨日はあんなにキャッキャウフフしてたじゃないですかあ」
そして、俺の袖を引っ張って抗議する。
俺はそれを宥めるため、さっき思い付いたことでフォローを入れた。
「でも、まぁ、なんだ。一緒にいて楽ではあるかな」
「・・・・・・ほ」
今度は空気の抜けたような不思議なリアクションが返ってきた。
「ほ?」
「ホントにもー、先輩ったらツンデレさんなんだからー! いけずー」
今度は俺の肩をばしばしと叩く。
「だああ、もう鬱陶しいな! 触るな! 離れろ!」
「またまた照れちゃってー。先輩の気持ちはちゃんと伝わってますよ!」
「伝わってない! というか、そもそも何にもない!」
「えー、そんな言い方されたら、私のガラスのハートが傷ついちゃいますよー」
「お前のハートは、ガラスはガラスでも防弾ガラスだろうが」
「いやーん、撃ち抜かれるー」
「お前無敵すぎるだろ」
俺が何を言っても、ものの見事にいなされてしまった。
「もし今の私達を物語にするとしたら、会話のテンポが早すぎて、地の文がほとんどないただの会話劇になっちゃいますね」
・・・・・・いや、失礼。

 

 



また「もろたび。」を読んでくれたら嬉しいです。
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