「ところで先輩、賭け事は好きですか?」【屋上・4話】

「ところで先輩、賭け事は好きですか?」【屋上・4話】

 

ゴールデンウィーク、いかがお過ごしなの? モロくんなの!

こっけ~:「モロのかいぬし、こっけ~ですー。今回は小説だよー」

 

※ 前回の話はこちら。

 

 

 

 

 

屋上・4話

 

 

 

 

「ところで先輩、賭け事は好きですか?」

 

 

 

突然そんな質問をされた。
賭け事と言っても生徒の身分だからパチンコや競馬に興じたことはない。
たまに連れと自販機で賭けじゃんけんなどはする程度だ。
「まぁ、普通」
「そうですか。じゃあ先輩、私と賭けをしませんか?」
「賭け?」
「はい。ルールは簡単です。私が先輩の考えていることを当てたら勝ち。外したら負けです」
「・・・そんなんでいいのか?」
これは俺に有利すぎる。人の考えていることなんてそう当たるものでもないし、万が一当たっていても違うといえば済むだけの話だ。
「はい。先輩が勝ったら先輩のお願いを一つ私が叶えてあげます。もちろん私ができる範囲内ですけど」
「じゃあもし俺が『もう二度と屋上に来んな』って言ったら来ないってことか?」
俺がそう言うと、あいつは一瞬虚を突かれたような表情をしたが、すぐに元に戻って
「はい、ちゃんと守ります。その代わり、私が先輩の言うことを当てることができたら―――」
一体この常識破りは何を提示してくるのだろうか。
俺は身構えたが、なかなかあいつは言ってこない。
「なんだよ。そっちもなんかお願いがあるんだろ?」
「え、えっと、はい。あの、ですね・・・・・・」
あいつは下を向いてごにょごにょと呟いている。そして両手のこぶしを握って、こう言った。
「わ、私とデートして下さい!!」
・・・・・・これまた随分大胆に来たもんだ。
まぁ、それくらいなら賭けに乗ってやってもいいだろう。そもそも完全に俺の方に分があるわけだし。
「わかった」
「ほ、本当ですか!? 絶対ですよ! 後でやっぱりだめとかなしですよ!」
「わかってるよ」
「男に二言はないんですよ! 約束して下さいね!」
興奮した口調であいつは俺に詰め寄る。
「わかった、約束する」
俺がそう言った瞬間、あいつはにやっと笑った。その表情を見て、俺の背筋に寒気が走る。
俺はとんでもない賭けに乗ってしまったんじゃないだろうか。
「では、先輩は何かを考えて下さい。私はそれを当てますから」
さて、どうしたものか。「腹減った」とか「眠い」とかだと簡単な気がする。もっと微妙なところを突かないと。
むしろこいつが知ってるわけじゃないことにすればいいんじゃね?
そう考えて俺は「うちの階段は14段」にした。我ながら大人げがないと思うが、賭けを仕掛けられた以上全力で勝つのが筋ってものだろう。
「よし、考えたぜ。何ならどこかにメモでも書いて証拠にしておくか?」
当てられるわけがないことを思い付いて俺は余裕を見せたが、あいつは
「いえ、必要ありません。では、先輩の考えていることを当てますね」
俺以上に余裕の笑みだ。なぜだ、超能力を持っているわけではないだろうに。
まさかその超能力を持ってるってか? 馬鹿馬鹿しい、うちではSFものは扱っていない。
あいつは俺に数歩近付くと、俺の頭の前に手の平を出して
「ふむふむ、なるほど・・・・・・」
何やら読みとっている。え、何これ怖い。
そして手の平をグーにして自分の頭に当てると、あいつはにっこりとほほ笑んだ。
「先輩の考えていることが分かりました。当たっていたら、私とデートして下さいね」
「・・・・・・わかった」
強がりには決して見えないあいつの言い方に、俺は不思議に思いながらも頷く。
「先輩が考えていることは―――」

 

「先輩は、私とデートするつもりがない」

 

「・・・は?」
俺はぽかんと口を開けた。何を自信満々に言ったかと思えば、かすりもしなかった。
「はず―――」
俺は外れだ、と言いかけて、そして気付いた。
『先輩は、私とデートするつもりがない』というのを外したということは、俺がこいつとデートするつもりがあるということになってしまう。
かといって俺がデートするつもりがないことになれば、あいつは俺の考えを当てたことになり、約束通りデートすることになる。
俺が考え込んでいるのを、あいつは満面の笑みで見ている。こ、こいつ・・・・・・
「イカサマじゃねぇか・・・・・・」
「作戦勝ち、と言って下さい」
こともなげに言ってのけるあいつ。俺はいろいろと逡巡したが、結局
「・・・・・・降参だ」
白旗を上げた。俺に勝ち目がない賭けだったにも関わらず、俺は絶対に自分が有利な賭けだと思って乗ってしまった。
見抜くことができなかった俺の完敗だ。
「・・・・・・」
何かリアクションがあるかと思ったが、あいつはまた下を向いている。
「どうした?」
俺が尋ねると、あいつは急に走り出して屋上のフェンスへ張り付いて、そして

 

「先輩とデートだよおおおおお!!!!」

 

叫びやがった。それも全力ボイスで。
「うるせぇ! 落ち着け!」
しかし俺の怒声もむなしく、あいつのハイテンションぶりは収まらない。
「だって! 最初は私と口すら聞いていなかった先輩とついにデートまでたどり着いたんですよ! これが落ち着いていられますか!」
今度は屋上をぐるぐると歩き始めた。
「美容院予約しなきゃ。デート当日は何の服着ていこう」
何やらぶつぶつと呟いている。
「そんなに舞い上がるなよ。ただ出かけるだけだろ」
「ただ出かけるだけじゃありません! デートです! 若い男女がキャッキャウフフと戯れるんですよ!」
「デートするとは言ったがそんなオプションは聞いていないぞ!」
「とりあえずですね、落ち着いて下さい」
「お前がな」
「まずデートの日取りを決めましょう。次の大安はいつだったかな・・・」
結婚式か。
「・・・・・・今週末はどうだ」
こいつに一方的に決めさせると危ない気がするから、俺は自分から提案した。
「え?」
「だから今週の日曜とか。空いてるか?」
俺がそう言うとあいつは一瞬固まった。そして
「先輩ったら自分から提案とか積極的じゃないですか!」
「な・・・!」
「うわあ、先輩も乗り気みたいで嬉しいです。私、ぐいぐい引っ張ってくれる男性が理想なんですよ」
「乗り気なんかじゃない。そしてお前の理想なんて知らん」
「その調子で先輩どんどん決めちゃってください。先輩の言うことなら法律に引っかからない限り、なんでも聞いちゃいますよ」
「危ない発言をするな」
「いやー、先輩も楽しみにしてくれているみたいで私嬉しいです!」
「だあああ、めんどくせー!」
一体どうしてこんなことになってしまったんだろう。俺は頭が痛くなってきた。

 

 



また「もろたび。」を読んでくれたら嬉しいです。
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