「今日も相変わらず貴重な青春の一コマを浪費してるんですね」

「今日も相変わらず貴重な青春の一コマを浪費してるんですね」

 

こんにちはなの!モロくんなの!

こっけ~:「モロのかいぬし、こっけ~ですー。今回は小説だよー」

 

※ 前回の話はこちら。

 

 

 

 

 

屋上

 

 

 

 

「今日も相変わらず貴重な青春の一コマを浪費してるんですね」

 

 

 

「・・・・・・」
その次の日も、あいつは屋上へやって来た。
昨日俺が会話に乗ったことに気を良くしたのか、一方的に話しかけてくるのは更にエスカレートしている。
「先輩、青春は一度きりですよ。昼寝以外にすることはないんですか?」
「・・・・・・・」
「あ、もし雨が降ったらどうするんですか?」
「・・・・・・」
「まさかそれでも雨にも負けず屋上で昼寝?」
そんなわけないだろ! プログラミングされたロボットじゃないんだから!
俺は心の中でつっこむが、口には出さない。ここで言葉を返したらそれこそあいつの思う壺だからだ。
「む~・・・そこは『そんなわけないだろ! プログラミングされたロボットじゃないんだから!』ってつっこむところですよ、先輩」
なんだこいつ、人の心を読む超能力でも持ってるんだろうか。俺は内心ドキリとした。
だが、幸いにも動揺は悟られなかったようだ。あいつは不機嫌そうな声を上げる。
「・・・・・・今日も無視ですか、そうですか」
はい、そうです。
「先輩、どうしたらまた目を開けてくれるんだろ」
お前がいなくなったら。
「仕方ないですね、今日は一時撤退して作戦を考えてきます」
どんなに作戦を練ろうと目は開けないっつーの。
「それじゃあお先にしつれ・・・きゃっ! 風でスカートが!」
俺は目を見開いた。視線の先には慌ててはためくスカートを抑えるあいつ・・・・・・ではなく、堂々と腰に両手を当てているあいつ。
・・・・・・やられた。
「あら、先輩って案外簡単に引っかかるんですね」
最初は驚いた顔をしていたあいつだが、すぐにしてやったりという顔になった。
悔しさと恥ずかしさが混じり合った感情が湧き上がってくる。
「そうですか、色仕掛けは有効ですか」
俺の横にしゃがみこんで、俺の顔を覗き込む。自分が情けな過ぎて怒る気すら起こらない。
「でも先輩、落ち込むことないですよ。先輩だって男の子なんですから」
訂正。2歳年下に男の子呼ばわりされたら、怒る気が出てきた。
「・・・・・・うるせぇよ」
「あ! やっと話してくれた! やったー!」
俺がついたのはただの悪態なのに、喜色満面の笑みになるあいつ。
仕方ない、今日はあいつとの会話に付き合ってやろう。俺は上半身を起こした。
「・・・・・・で?」
「・・・・・・え?」
俺が一文字で話しかけると、あいつは一文字で返す。さすがに伝わらなかったか。
「だから、何か目的があって話しかけてきたんだろ。何の用だ?」
先程の「で?」の一字に込めた意味を説明する。
「目的、ですか。えっと・・・・・・」
「ないのか?」
俺が言うと、あいつはぱたぱたと両手を顔の前で振った。俺が機嫌を損ねたとでも思ったのだろうか。
「いや、その、最終的な目的はあるにはあるんですけど、ここで公表するにはおこがましいといいますが、まだ時期尚早感も否めなくてですね」
「は?」
「ですから、物事には順序と言うものがありまして、それぞれの段階ごとに達成目標のようなものが存在しているわけでして、今はまだ第二段階なので」
「つまり?」
「今日の目的は、話すことです」
「・・・・・・へ?」
「ですから、目的があって話したわけではなくて、話すことが目的なんです」
話すことが目的。なんだ、こいつ放課後のおしゃべりに興じたいだけなのか。
「話すことが目的なら、俺みたいな無愛想な奴じゃなくてもっと他に適任がいるだろ」
何も無視を決め込こもうとする相手と話すこともないだろうに。
「あの、先輩。それ本気で言ってます?」
「いや、本気も何も、正論だろ」
「あぅ、ここまで天然で鈍感だなんて事前情報になかったよ。先は長いな・・・・・・」
独り言を言ったかと思うと、なぜか憐みを込めた目で俺を見るあいつ。
「んだよ。はっきり言えよ」
「この先輩私に今日もまた恥ずかしいこと言わせるつもりですよ。隠れSですよ。なんとなくはわかってましたけど」
「え? “また”?」
後半の言葉は聞かなかったことにして、引っかかった言葉の意味について考える。
“また”と言うからには以前に言った言葉なんだろう。だが、流れ的に今日言ったことではなさそうだ。すると
「昨日の『例え先輩の気持ちが私の思い通りにならなくても、私は頑張りますから』ってやつか?」
「きゃーーーー!!!!」
「がふっ!」
俺は突然息が止まりそうになった。ワンテンポ遅れてみぞおちにパンチを入れられたのがわかる。
「て、てめぇ・・・・・・」
不意をつかれてもろに食らってしまった俺は、情けないことに咳き込んでしまう。
「・・・はっ! せ、先輩大丈夫ですか? お怪我はないですか?」
「お前がやったんだろ・・・・・・」
「そ、そうでした。いくら先輩が乙女の純情に土足で踏み込むデリカシーゼロの人間だったとは言え、手を上げてしまってすいません!」
前置きが長ったらしかったが、本当に謝る気はあるのだろうか。
「こ、このままでは先輩の命が危ない! 救急車ー! 衛生兵ー!」
「大袈裟だ」
「ですよね」
さっきまで慌てふためいていたのが嘘だったかのように、途端に冷静に相槌を打つあいつ。一体なんなんだ。
「あぁ、もう帰る」
もう昼寝する気分じゃなくなったので、俺は帰ろうと思い脇にあったかばんを手に取った。すると
「待って下さい先輩。私も帰ります」
そう言って少し離れたところに置いてある自分のかばんを取りに行く。
「いや、なんで一緒に帰ろうとするんだよ」
「またまた、先輩ったら照れちゃって」
「照れる要素1ミリたりともねぇよ」
生意気なあいつの方を向いて俺はあしらった。その時
一陣の風が吹いた。
風は、俺の髪を揺らし、ズボンから出ているカッターシャツの裾をはためかせる。
「きゃっ・・・!」
風は、あいつの髪を揺らし、スカートをはためかせ、そして・・・・・・
目にもとまらないくらい素早い動作であいつはスカートを手で押さえると俺の顔を見上げた。
「・・・・・・」
俺を睨みつけるが、ちっとも怖くないのはあいつの顔が真っ赤なせいだろう。
「・・・・・・見ましたか?」
「・・・・・・何を?」
再び攻撃されては敵わないので、俺は言葉を慎重に選ぶ。
「見ましたよね?」
「見てない」
「こっち見てましたもんね?」
「気のせいだろ」
「角度的にも見えたはずです」
「見えてないって」
「何色でした?」
「白―――」
その刹那、あいつは一瞬で俺との距離を詰めると

「がふっ!」

再びみぞおちに入れられ、無様にも俺は膝をつく羽目になった。

 

 

 

続く

 



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