【単発小説】天体観測 ~りゅうが来る~

【単発小説】天体観測 ~りゅうが来る~

 

こんにちはなの!モロくんなの!

こっけ~:「モロのかいぬし、こっけ~ですー。土曜日は小説の日!」

かいぬしさんが、高校生の頃に書いた小説なの!

 

 

 




 

 

 

天体観測

 

 

 

 

 

 

「りゅう座流星群が来るんだって!!」
ひかりは俺の机に来るなりそう言った。
「ふーん・・・・・・」
俺は興味ないね、という意味を込めた相槌を打つ。しかしこいつには全く通じなかったようだ。
「ね?ね? 今夜見に行こうよ!」
「こ、今夜ぁ?」
いきなりの提案に思わずふぬけた返事をしてしまった。
「そう、今夜! 今日が一番よく見えるんだって!」
「えー・・・・・・」
「ねぇ~、い~~こ~~お~~よ~~~~」
両手を前後に大きく振るひかり。それでも中学生かよ。
「行こっ、雷斗(らいと)! ね?」
ひかりは首をかしげて、悲しそうな二つの瞳で俺を貫く。
グハッ。これは凶悪だ。この表情をされると俺は勝てない。
「・・・・・・わかったよ。行こう、今夜」
「やったー!」
万歳をしてひかりは喜んだ。だからホントにそれでも中学生かよ。
「じゃあ9時にお前ん家に迎えに行くよ。それでいいか?」
「うん♪」
よし!、とひかりは満面の笑みで小さくガッツポーズをした。
そんな姿を見ると、やっぱりかわいいなぁと思ってしまう。
・・・・・・いかんいかん。こんなんだから回りからバカップルと冷やかされるんだ。
そう―――こいつ、ひかりは俺の彼女で、俺、雷斗はあいつの彼氏。
去年、つまり俺らが中2のときにあいつから俺に告白してきた。
そん時は彼女もいなかったし、けっこうかわいかったから軽い気持ちでOKした。
飽きたら別れようと思ってたけど、彼女の屈託のない笑顔と純粋な心に触れているうちに・・・・・・いつしか俺もあいつのことをスキになってしまった。
そんなこんなでもうかれこれ1年間付き合っている。
『おーい、チャイム鳴ってるぞー、席つけ~』
教室の扉を開けて先生が入ってきた。この数学の先生はけっこう厳しい。
だからひかりも慌てて席に戻ろうとしていた。去り際に一言言う。
「じゃあ約束だよ! 絶対だからねっ!」
「へいへい」
ひかりは俺の返事に嬉しそうに微笑みながら自分の席に戻っていった。
「はぁ・・・・・・」
俺はため息をついた。星を見に行くのが面倒だからじゃない。むしろその逆だ。

あいつと一緒に居れるなら。
あいつの笑顔が見れるなら。

俺はあいつのためになんだってしてやれるだろう。
口ではついああいってしまうけれど。
「素直じゃないねぇ。俺も・・・・・・」
絶対誰にも聞かれないよう、俺は声に出さず唇だけ動かして言った。

 

 

 

 

8時58分。もう日はとっくに落ちている。
俺は自転車をこいであいつの家に向かっていた。
頬を切る風が冷たい。厚めの上着を着てきて正解だった。
つい最近まであんなに暑かったのに、10月ともなると夜はかなり冷え込む。
見慣れた角を右に曲がると、あいつが自分の家の前に立っているのが見えた。
腕時計を見ると9時ジャスト。ぴったりだ。俺はあいつの脇で止まった。
「もぉ~、遅いっ!!」
「な、ちゃんと9時に着いたじゃねえかよ」
俺は腕時計をひかりに見せる。しかし
「女の子より先に来なきゃダメでしょ~! 10分前には着いてなきゃ」
ひかりは両手を腰に当てて言った。
まったく、口うるさいやつだ。
「なんだよそれ」
「・・・・・・来ないんじゃないかって不安になったんだから」
あいつはそういうと顔を伏せて黙り込んでしまった。
さっきまであんなに強気だったかと思えば急にふさぎこんでしまう。
友達との仲ではいつも明るくて前向きな彼女だが、俺の前では弱い面を見せる。
俺は自分を頼ってくれることを嬉しく思うし、あいつのことを守らなきゃなと思う。
「俺はお前との約束をすっぽかしたりしねーよ」
うつむくあいつの頭をポンポンと手でたたく。
俺の冷えた手よりもさらに冷たいあいつの髪の毛。
・・・・・・だいぶ長いこと外で待ってたんだな。
普段はなんでも遠慮なく言うくせに、そういうことは自分から言わない彼女がたまらなく愛おしい。
「悪かったよ。今度からはもっと早く来るよ」
「・・・うん!」
顔を上げて微笑むひかり。暗闇の中なのに、それはとてもまぶしく見えた。
「よし、じゃあ行くか! 後ろ乗れ」
「はーい!」
ひかりは元気よく返事をすると自転車の荷台にちょこんと座った。

「・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・」
「あれ、行かないの?」
「え? どこ行きゃいいの?」
「・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・」
「えへ、わかんないや」
「おいおい・・・」
「おまかせします、隊長!」
「ったく・・・。しっかりつかまっとけよ」
「りょーかい♪」

こんなアホらしい会話をして、俺はひかりを乗せて流星群を見られるところへとペダルをこいだ。
背中に温かいぬくもりを感じながら―――

 

 

 

 

人通りのない真っ暗な夜道。
俺は自転車の後ろにひかりを乗せてこいでいた。
目的地は住宅街から少し離れた所にある公園。
まわりの建物よりも少し高い位置にあるその丘なら、きっと星がよく見えると思ったからだ。
「くっ、お前また太ったんじゃねぇか?」
上り坂にさしかかって負担が増えた俺は、ひかりに憎まれ口を叩いた。
「ちょっと雷斗、それひどいよ~! 女の子にそんなこと言っちゃダメでしょ~」
期待通りの反応。これだからついついからかいたくなってしまう。
「そんなに女の子女の子言うのはもう少し女の子っぽくなってからにしろよ」
「私のどこが女の子っぽくないっていうのよ」
堂々と言ってのけた彼女に、俺は思ったことを言ってゆく。
「まず朝は寝癖も直さずに学校へ来るところだろ」
「う・・・」
「あと飯を食う速さがハンパない」
「・・・・・・」
「それに―――」
「あー! ストップストップ!! もういい、わかりました!」
俺の発言を遮るひかり。やっぱり自分でも思い当たるところがあるのだろう。
「ひどいよ、もう・・・・・・」
いけね、ちょっとイジりすぎたかな?
「悪かったよ、ごめん」
「・・・・・・・・・」
「ひかり?」
「・・・・・・グスッ」
や、やべっ、泣かせちまった!?
キキーッ。
俺はブレーキをかけて止まり、後ろを振り返る。
「ひかり、ごめん! 言い過ぎたよ、な? この通り!」
ひかりは両手を顔に当てて黙っている。
「ホントごめん! 許してくれ!」
「・・・・・・クスッ」
「ひかり・・・?」
「・・・あはははは!」
ひかりは急に笑い出した。えっと・・・・・・
「わ~い、雷斗ひっかかった~!」
「てっめぇ、嘘泣きしやがったな!」
「ひっかかる方が悪いんだよ~だ」
そう言ってひかりは自転車から降りて坂を登る。
「ほら、重たい荷物が降りたんだから早くこぐこぐ!」
俺の前を歩くひかり。
荷台から降りたのは俺のことを気遣ってくれたんだろうか。
もしそうならありがたい。ありがたいけれども。
「・・・・・・後ろ乗れよ」
「え?」
俺の唐突な言葉にあいつは後ろを振り返った。
「乗れって」
「いいよいいよ、坂道だと雷斗も大変だし~」
「・・・・・・いいから乗れ」
俺は意地になって言う。
「うん・・・、わかった。でもなんで?」
ひかりは不思議そうにしながら再び荷台に座る。足への負担が少し増えた。
俺は立ちこぎの体制になると、力を振り絞ってゆっくりとペダルをこぐ。

・・・・・・自分でもなんでひかりをまた後ろへ乗らせたのかわからない。
ひかりを乗せたまま坂道を登りきりたかった男のプライドなのかもしれないし、消えた背中のぬくもりが寂しかったのかもしれない。
どちらも当てはまるような気もするし、どちらも違う気もする。
でも、一つだけいえることがある。それは
「俺から、離れるな、よ」
息も切れ切れに苦しいさなか搾り出したその言葉。
「・・・・・・うん!」
ひかりに俺の真意が伝わったかどうかは分からない。けどまぁ、それでもいい。
「あ、もう少しでてっぺんだよ! ファイト!」
前を見上げると上り坂が終わっている。あと少しだ。
大切な人の応援する声を力にしながら、俺は自転車をこいでゆく。
目指す丘は、すぐそこだ。

 

 

 

 

「うわー・・・!」
「これは・・・すげーな」
丘の上で俺たちを待っていたのは、思わず声を漏らしてしまうほどきれいな満天の星空だった。
ここの公園はまわりの住宅よりも高い位置にあるし、明かりも届かない。
だからこんなにきれいな星空を見ることができるんだろう。
「ねぇねぇ、あっちで見よっ!」
ひかりが芝生広場の方を指差した。俺は自転車をテキトーな位置に留める。芝生に移動すると
「そうだ!」
突然ひかりは声を出した。そしてその場に仰向けに寝転ぶ。
「こうすれば見やすいよ!」
そういって左手で自分の横をたたいた。俺も寝転べってか。俺はとなりに腰をおろした。
「座らないでこうやって見なよ」
「イヤだよ。背中が冷たいだろ」
「男の子でしょ、それぐらいガマンガマン!」
「この際男とか関係ねぇだろ」
「もう、仕方ないなー・・・えい!」
「うわっ!」
ひかりは自分の体を支えていた俺の右手を引っ張った。バランスを崩した俺は後ろに倒れて頭を打つ。
「いってぇ~・・・」
「ごめんねー、でも雷斗が素直に聞けないからいけないんだよ~」
ぬけぬけと言ってのける彼女を俺は少しにらむ。だけどあいつは気にも留めず空を見上げた。
「あ! 流れ星!」
「え、どこどこ!?」
俺も急いで上を見上げる。しかしそこにはただの星空。
「あら、意外に食い付きがよかったね~」
「・・・!」
一瞬子供のような反応を見せてしまったことをすごく後悔する。
「なーんだ、雷斗も実は流れ星に興味があったり?」
「・・・るせーな」
俺は左に寝がえりをうってひかりに背を向けた。
「あ! また流れ星!」
「マジで!」
俺はまた急いで上を見上げる。しかしそこにはまたもただの星空。
「ほらー、ちゃんと上見てないからだよ~」
ひかりはそんな俺を見てにやりと笑う。
・・・やっぱりこいつには勝てねぇな。
俺は同い年の中でも体はでかい方だし、けんかだってそこそこ強い。
学校でも活発なやつらとつるんでいるから、あまり関わりのないクラスメイト、特に女子からは少し怖がられているような感じだ。
だけどこいつは・・・ひかりはそんな俺に少しもびびることもなく何でもいってくる。
「ねぇ、なんか頭痛くならない?」
「ん?」
「だから、こうやって寝転がってると頭痛くならない?」
「そりゃあ地面が冷えてるから・・・」
俺が言いかけるとひかりはそれを遮った。
「そうじゃなくて~。・・・もう、わかんないかなぁ?」
「何が?」
「だから~・・・こういうこと!」
言うやいなやひかりは俺の右腕をとって自分の方に伸ばして、そしてそれを枕にした。
「これでよ~し♪」
「・・・お前なぁ」
俺は文句を言いかけようとしたが、ひかりの満足そうな顔を見ると毒気を抜かれてしまった。
「・・・ま、いっか」
そうつぶやいて再び見上げた夜空に、一筋の光。
「あ、流れ星!」
俺は思わず右手で空を指差した―――枕となっていた腕を素早く抜いて。
「いったぁ・・・」
ひかりは頭を軽くうった。
「あ、ごめん! わざとじゃないんだ」
「もう、バカ!」
そう言いながらも戻した俺の右腕に再び頭を乗せるひかり。
・・・こころなしかさっきよりも距離が近い。
「なぁ」
「なに?」
「・・・近すぎじゃね?」
「気にしない、気にしない!」
やっぱり気にも留めないひかり。
どうもこいつといるとペースが狂う。というか主導権を握られている気がする。
「・・・ま、いっか」
それでも、それも悪くないかな、と思ってしまう。俺は自分で思う以上にこいつのことがスキなのかもしれない。
となりで幸せそうに笑みを浮かべる彼女を見ながら、俺はそう思った。

 

 

 

 

「へっぐし!」
「・・・お前さー、もっとかわいいくしゃみできないのかよ」
「そんなこといったってどうしようもないでしょ!」
流星群を見始めて一時間が経過して、そろそろ体が冷え切ってきた。
「そろそろ帰るか?」
「そうだねー・・・ぶえっくし!」
「お前なー・・・」
しょうもないやりとりをしながら俺たちは自転車へと移動した。
「よいしょっと」
座ってみると座席が冷たい。俺は持ってたかばんを荷台の上に敷いた。
「どうしたの?」
「いや、座るの冷たいかなと思って」
俺がそう言うとひかりが
「・・・ありがとっ! 雷斗のそーゆー優しいところ大スキ!」
俺の腕に抱きついてきた。
「ん」
俺は恥ずかしくなってテキトーに答える。
寒い夜空の下、抱きついてきたひかりがとても暖かくて。俺は思わずあいつを抱き寄せた。
ぼすっ。
俺より一回り小さいひかりが胸の中に収まる、
「きゃっ・・・いったいどうしたの?」
至近距離から見上げてくるひかり。胸がどきんと高鳴る。
「・・・誰も周りにいないよな」
「・・・え?」
俺は驚くあいつに、

 

 

「ねぇ雷斗」
「ん?」
丘からの帰り道。自転車の荷台に乗ったひかりが尋ねる。
「雷斗は流れ星にお願いをした?」
「そういうお前はしたのか?」
「え、私はねー」
ひかりは一度溜めてから
「雷斗とずぅーっと一緒にいられますように! って」
「・・・・・・」
まぁ予想はしていたが、やっぱり実際に言われると恥ずかしい。
「お前とずっと一緒だなんてめんどくせーな」
「え、ひど」
「・・・と言いたいところだが、俺の願いもまぁ似たようなもんだ」
「え?」
夜の空気が冷たくなければ、顔が熱くてこんな言葉言えないだろう。
「また来年も、お前と星が見れますようにって」
「・・・・・・」
今度はひかりが黙った。沈黙が続き俺はいたたまれなくなる。
「・・・なんか言えよ。恥ずかしいだろ」
しかしひかりは何も言わずに、俺の体を後ろからきつく抱きしめた。
「そんなにくっつかれると自転車がこぎにくいだろ」
ひかりは離れない。
「ま、下り坂だからいっか」
丘からの坂道を二人で下ってゆきながら考える。
お前みたいなのと一緒にいられるやつなんていねーよ。
・・・俺以外はな。

 

 



ポチっと押してくれたら嬉しいです。


 

こっけ~:「ちなみに本当はこの最後に、」

 

流星群はきれいだった。
来年もあの丘に一緒に行くはずだった。
―――あんなことさえ起きなければ。

 

こっけ~:「っていうとっても不穏な3行が入ってました」

この後どうなるなの?

こっけ~:「それがここで終わってるんだー」

未完成なの!

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