【小説・キミと夏の終わり】エピローグ:キミがくれたもの

【小説・キミと夏の終わり】エピローグ:キミがくれたもの

 

こんにちはなの! モロくんなの!

こっけ~:「モロのかいぬし、こっけ~ですー。今回は『キミと夏の終わり』最終話!」

半年に渡って連載してきたお話も、これで最後なの!

 

※ 目次はこちら。

 

 




 

 

 

キミと夏の終わり

 

 

 

 

エピローグ:キミがくれたもの

 

 

 

 

8月31日、東京駅。
私はまたおばあさんの荷物を持って、新幹線を降りた。他の乗客の流れに合わせて歩く。
もう昼だと思っていたのに、ホームの掲示板を見ると、まだ8時半だった。きっと朝が早かったせいだろう。
エスカレーターに乗りながらふと考える。たった3時間前には翼といたのに、それがずっと前のことのようだ。
「おばあさんは、次にどの電車に乗り換えるんですか?」
私は下段に立っているおばあさんに尋ねた。私は今から別の新幹線に乗り換える。
「娘の家族がこの駅まで迎えに来てくれているから、ここで降りるわ」
「あ、そうなんですかー。じゃあ改札口の近くまで荷物持っていきますねー!」
私はここからまた別の新幹線に乗るから、改札口を出ることができない。
エスカレーターを降りると、そこにはものすごい数の人がいた。さすがは東京だ。
おばあさんと私は改札口へ向かう。そして他の人の邪魔にならないように壁際に寄って、おばあさんに荷物を渡した。
「また荷物を運んでくれてありがとうね、葵ちゃん」
「いえ、どういたしまして!」
おばあさんがお礼を言って、私は笑顔で返す。
「それにもう一つ、ありがとう」
「はへ? 何がですかー?」
おばあさんが意味ありげに二度目のありがとうを言ったので、私は理由を尋ねる。
するとおばあさんは
「私の名前をまだ葵ちゃんに言ってなかったわね」
「は、はい」
突然関係のないことを言うので、私はわけがわからなかった。次の言葉を聞くまでは。
「私の名前はね、星野 和江っていうの。離婚したから旧姓に戻したのだけど、結婚していた時の名前は古川 和江だったわ」
旧姓が星野で、離婚する前の苗字が古川。
「・・・え、それって!」
「えぇ、そうよ。世間は狭いわねえ」
いたずらっぽく笑う星野 和江さん―――おばあさん。そして
「だから『ありがとう』。あの人と娘のことを心配してくれて」
そうだったのか。それでおばあさんは私が菜摘さんと古川先生の話をした時に驚いた表情だったのか。
「あ、えっと、その・・・・・・」
驚いて言葉が出てこない私に、おばあさんは微笑みながら言った。
「葵ちゃん、じゃあね。気をつけてね」
「・・・あ、はい!」
「ふふ、もしかしたらまたどこかで会えるかもしれないわね。ごきげんよう」
おばあさんは荷物を持って改札口へ向かう。
改札口を出た直後、一人の女性がおばあさんに近付いた。あの人がおばあさんの言っていた娘さんだろうか。
雰囲気はまったく違うけど、でもどことなく菜摘さんに似ている気がする。
おばあさんが娘さんと少し話すと、私の方を振り返った。娘さんもこちらの方を見る。
あれ・・・?
私はその人にどこか見覚えがあった。菜摘さんに似ているとかではなく、あの人に会ったことがある気がする。遠い記憶。えっとあれは・・・?
おばあさんが手を振り娘さんがおじぎをしたので、私も慌てて頭を下げた。
私が頭を上げても二人ともまだこちらを見ていた。どうやら私が行くまでそこにいるようだ。
私は再び頭を軽く下げると、改札口を後にした。

 

 

 

翼が手を振っている。自転車に乗りながら、私に向かって大きく手を振っている。
そして私はまぶたを開けた。目の前には座席の背中。左手に窓、右手に空席。
眠っていたのか、それとも思い出に耽っていただけなのかわからないけれど、私は意識を現実の世界に呼び戻す。
東京駅から次の新幹線に乗った私は、再び東へと向かっていた。
窓に反射する自分の顔。半透明な顔の向こうには、緑色の田んぼが広がっている。
そのまま視線を少し上げれば、青空に大きな入道雲。
「今日も、暑そうだなー」
誰に言うわけでもなく、口に出してみた。
東京駅まではおばあさんが話を聞いてくれたけれど、今は私の話を聞く人はいない。
「翼・・・・・・」
キミの名前をつぶやいてみた。自分にしか聞こえない、小さな声で。
目を閉じれば鮮やかに蘇る、1年半の思い出の数々。
そしてその最後を創るのが、最後まで大きく手を振ってくれたキミの姿。
だからこうして、私は目を閉じれば夢の中でキミの姿を思い浮かべることができる。きっとこの先ずっと、永遠に。
キミは私にたくさんのものをくれたね。
クリーム色の少し大きなかばん。
人をスキになる素晴らしさ。
自分のことを大切に思ってくれる人がいるという幸せ。
約束を守る大変さと、それを守れた時の嬉しさ。
そして何より、最高の思い出を・・・・・・。
これらは全てキミがくれたもの。
8月31日、世界は今日もいつもと同じように回っている。
明日から9月。私は新しい高校で、新学期を迎えることになるだろう。
あまりにも展開が早過ぎて、実感が薄いけれど。
今年の夏も、もうすぐ終わる。すぐに秋になって、きっと窓の外に見える田んぼは金色に輝くようになるだろう。
そして、私の高校2年生の夏ももうすぐ終わる。
季節が移り変わっていくように、人は常に変化してゆく。
年月がその歩みを止めることがないように、人は成長して大人になっていく。でも
「ボクたちは変わらないよね」
私はつぶやいた。世の中にはずっと変わらないものだってあると思う。
「翼、今までありがとう。それと」
一呼吸置く。

「これからもよろしくね!」

翼の「おぅ」という返事が聞こえた気がした。

 

 

 

キミと夏の終わり 完

 

 



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