【小説・キミと夏の終わり】第四話:キミと金魚と夏祭り

【小説・キミと夏の終わり】第四話:キミと金魚と夏祭り

 

こんにちはなの!モロくんなの!

こっけ~:「モロのかいぬし、こっけ~ですー。土曜日だから小説を載せるよー」

今週は日頃の更新ができてなかったから、もはや何のブログかわからなくなってるなの・・・。

 

※ 目次はこちら。

 

 




 

 

 

キミと夏の終わり

 

 

 

 

第四話:キミと金魚と夏祭り

 

 

 

 

「ごちそーさまでしたー!」
私は手の平を合わせて軽く礼をした。目の前のテーブル(前の座席についているやつだ)には、全て食べ尽くされたお弁当箱が載っている。
「ふふ、全部食べられるだなんて本当にお腹空いてたのね」
少し驚きの混じった口調でおばあさんが言った。事の次第はこうだ。
翼との話を続けようとした矢先に、車内販売のカートがやってきた。
そして恥ずかしいことに、昨日の昼から何も食べていなかった私はお腹が鳴ってしまった。
その音を耳にしたおばあさんが、お弁当を買ってあげると言ったのだ。
私はもちろん断ろうとしたが、さっきかばんを持ってくれたお礼というおばあさんの笑顔と、そして何より空腹には勝てず、お言葉に甘えることにしたのだった。
「ホントにすいません・・・・・・。ごちそうになってしまって」
「あら? 別に謝ることないのよ。悪いことしたわけじゃないんだから」
いたずらっぽい顔をしておばあさんは言った。この台詞は、さっき私が話した・・・・・・
「あはは。『ありがとうございます』!」
「ふふ、どういたしまして」
私たちの笑い声が新幹線の車内に響き渡る。
「えっと、じゃあ話の続きをしますね!」
ひとしきり笑い終え、私は話を再開しようとした。
「えぇ、聞かせてもらうわ。一体二人はこれからどうなるのかしら?」
「じゃあ次は夏祭りの当日、待ち合わせの場所へ着いた時から―――」

 

 

「はわわ、ちょっと遅れちゃった・・・・・・」
慣れない浴衣のせいで歩くのが遅くなってしまい、待ち合わせ場所の保穂公園駅に着いたのはすでに約束の6時を10分回っていた。
「翼、怒ってるかなー・・・・・・。一体どこだろー・・・」
駅の出口は夏祭りに来た人たちでかなりごった返していた。
「むー・・・・・・。どこかなー・・・・・・。あ! いたー!」
私は翼を見つけた。駅の柱にもたれながら辺りを見回している。きっと私を探しているのだろう。
「つーばーさー!」
私は大声で翼の名前を呼びながら手を振った。翼が私の声に気付きこっちを向く。
「遅れてごめんねー!・・・・・・うわ!!」
翼に駆け寄っていたその時、私は急ぎすぎて足がもつれてしまった。このままじゃ転んじゃう・・・!
「・・・・・・?」
しかし、覚悟していた衝撃はなかなか来なかった。私は不思議に思いおそるおそる目を開ける。すると
「だ、大丈夫か・・・?」
私の上の方から声がした。ん、上?
私は上を見た。自分の状況を理解するのに4秒。そして
「はわわわわ! ご、ごめん!!」
慌てて私は翼の体から離れた。どうやら私は翼の胸の中へ倒れこんでしまったみたいだ。
「え、あ、いや、別にいいけど・・・・・・。びっくりした~」
後ろ髪をがしがしと掻く翼。
「ホントにごめんねこういう時も『ありがとう』なのかなでもぶつかっちゃったのは悪いし・・・・・・」
頭の中がパニックになってしまい自分でも何を言っているのかわからなくなってきた。翼はそんな私に
「んなこと気にしなくていいから! それより、行こうぜ!」
微笑みかけて歩き始める。
少し落ち着きを取り戻した私は、今度は転ばないように気をつけて翼の横に並んだ。

 

 

 

夏祭りの会場、保穂公園はたくさんの人で賑わっていた。家族連れ、カップル、友達同士・・・・・・いろんな人たちで道は溢れていた。
道の両脇には、美味しそうな匂いを出す焼きそばの屋台や、喜びと興奮の混じった声が聞こえる射的など、こちらも様々な屋台が連なっている。
「すごい人数だねー!」
人混みに負けないように少し大き目の声で翼に話しかけると
「まぁこの街の夏の一大イベントだからな。・・・おっと」
翼は向こうから歩いてきた人にぶつからないよう避けながら答えた。
道はまともにまっすぐ歩くこともままならないくらい人が多く、少しでも気を抜けば翼とはぐれそうだ。
「こんなに人多いと、はぐれちゃいそうだねー」
「え!? あ、そ、そうだな」
なぜか慌てたような声を出す翼。どうしたんだろう。
「あ、じゃあさ、葵」
翼が周りに気をつけながら私の方を向いて言った。
「なにー?」
私も人を避けながら答える。
「えっと、そのさ・・・・・・ゆ、浴衣、すっごく似合ってるな!」
「え、ホント? ありがとー!」
翼が褒めてくれて、私は素直に嬉しかった。
浴衣を着るのはもう何年ぶりになるかわからないほど久しぶりだったので、私は似合っているかどうか不安だったのだ。
「翼の服もかっこいいね! そういえば翼の私服見るの初めてかもー」
翼は水色のTシャツに、白地に細くて黒い縦線の入った半袖の上着を羽織っていた。下は青白いジーンズで、いつもの使い古しのスニーカーをはいている。
首から銀のネックレスをぶら下げ、左肩には深緑色の布製でゆったりとしたリュックをかけていた。
「おぅ、サンキュー! まぁ確かに今まで学校以外の場所で会ったことなかったからなぁ」
そう、私たちは学校ではよく話すのに、学校の外で一緒に遊んだことは一度もなかった。
「電話かかってきたのも昨日が初めてだよねー、翼に電話番号教えたの5月だったのにー」
「番号つったって家のやつだろ? 葵もケータイ持てばいいのに」
「ケータイかー。今まであんまり必要だと思わなかったからなー」
私は携帯電話を持っていない。引越しを繰り返し、トモダチをあまり作れなかった私にとって、携帯電話はたいして必要なものではなかった。
今ではトモダチもできたけれど、今のところ買う予定はない。
「そういえば花火大会っていつから始まるのー?」
「あぁ、7時半からだよ。1時間半かけて1万発の花火を打ち上げるんだ」
翼がすらすらと説明した。
「へー、翼詳しいんだねー!」
「え!? そ、そうか?」
なぜかまた慌てている翼。今日の翼はいつもとどこか違う気がした。
「ねー、翼。今日の翼なんかちょっと変じゃない? どーかしたの?」
「そ、そんなことないって。お、あそこに金魚すくいがあるぜ!」
「はへ? 金魚すくい? やりたいやりたい!」
私の興味はそっちへ向いた。私の違和感は気のせいだったかもしれない。
夏祭りはまだ始まったばかり。夜は更けてゆく。

 

 

 

「んー、おいしー!」
「たかだか綿菓子で・・・・・・喜びすぎだろ」
満面の笑みを浮かべる私に、苦笑いしながら翼は言った。
私の右手にはさっき屋台で買った綿菓子。左手には、一匹も取れなかった私におじさんがおまけしてくれた三匹の金魚が袋に入って吊り下げられている。
「だってボク、スキなんだもん、綿菓子!」
小さい頃から私は綿菓子が好きで、お祭りなどで綿菓子を売っている屋台を見つける度に、お父さんにねだっていた。
私は大きく口を開けてぱくっと食べる。甘い味が口の中に広がり、そしてすぐに溶けてなくなった。
「それにしても葵ってすげぇうまそうに食べるよな」
「だってホントにおいしいんだもん!」
食べながら前方を見ると、斜め前に”サメ釣り”とかかれた屋台があった。まさか金魚のようにサメを釣るのだろうか。
私がそのことを翼に訊こうと思った時
「あ」
私は足を止めた。
「どうした?」
「あそこ・・・・・・」
私はサメ釣りの横、りんごあめの屋台の前にいる二人を指差した。
「ん? ・・・・・・あぁ、あれは同じクラスの、真田と上田だっけ?」
私は頷いた。私が見つけたのはクラスメイトで親友の上田 あやめちゃんと、彼女の幼馴染で同じくクラスメイトの真田 孝幸君だった。
あやめちゃんはりんごあめを指差しながら、もう一方の手で孝幸君の腕を引っ張っている。どうやらりんごあめをねだっているようだ。
「はは、真田も大変だな。そういえば、上田って葵の友達だろ、あいさつしてく?」
「・・・・・・いい」
私は短く答えると、あやめちゃんたちがいる反対側の端を歩き出した。素早く二人から遠ざかる。
「お、おい葵? どうしたんだよ?」
翼が慌てて私の後ろを追いかけてきた。だけど私はその問いに答えず、金魚が潰されぬよう注意を払いながら、人混みの間を縫って進み続ける。
しばらくの間歩いて、私はそっと後ろを振り返ってみた。私に追いついた翼がもう一度私に尋ねる。
「どうしたんだよ葵、いきなり歩き出して」
「だって」
口を開いて、私は困ってしまった。どうして私は二人から逃げるような真似をしたのだろう。自分でもよくわからない。
「だって、何?」
私の回答の先を促す翼。
「なんか・・・・・・なんか、見つかっちゃいけないような気がしたんだもん」
なぜだかわからないけど、私はなんとなくそんな気がしたのだった。
「・・・・・・ふーん、そう」
私の答えを聞くと、翼は悲しそうな、怒ったような、もしくはその両方が入り混じった表情をして私から目を逸らした。
沈黙が流れる。このままだとなんだか気まずいので、私は何か会話を作ろうときっかけとなる話題はないかとあたりを見渡した。するとちょうどその時
<まもなく、第49回保穂夏祭り、花火大会を行います>
と、花火がもうすぐ始まることを告げるアナウンスが流れてきた。
「あ、花火もうすぐだって! 楽しみだねー!」
私がアナウンスに乗じてそう言うと
「・・・・・・あぁ、そうだな。よし、花火見やすいとこ探すとすっか!」
翼の顔に笑顔が戻り、私はほっとした。再び一緒に並んで歩き始める。
周りもこころなしか活気づいてきた気がした。いよいよ花火が打ち上げられる。

 

 

 

「んー、ここも人でいっぱいかー・・・・・・」
空に巨大な華が咲き乱れ、号砲が鳴り始めてしばらくして。
私たちは花火がよく見える所を探し歩いていた。
「なかなかいいとこ見つかんないねー」
「そうだなぁ・・・・・・」
公園の至る所に木が生えているので、空を十分に見ることが出来ない。
広場のような開けた所は既に人で埋まっていて、私たちが入り込む余地はなかった。
「ごめんな、こんなに混むんだったら場所取りでもしときゃよかったな」
「ううん、翼のせいじゃないよ! みんな花火が見たいんだもん、しょうがないってー」
私は率直な思いを言った。これだけ大規模な花火大会なのだ。たくさんの人がいても仕方ない。
「そっか、サンキュ。う~ん、それにしても花火がよく見える場所ねぇかなぁ・・・・・・」
「どこも木が邪魔して花火が見えないからねー」
見上げると、木々の隙間から真っ赤な花火の一部が見えた。
「だよなぁ、どっか高いとことかあればいいんだけど」
高い所、か。私はぐるっと周りを見回した。目の前には広場があるけれど、たくさんの人達で埋まっていて私たちはそこへ入れなかった。
今歩いている道の両脇は高い木々が並んでいて、公園の出口まで連なっている。
出口の向こうの車道はビル街になっていて、更にその向こうには小さな山。でも山は林になっているから公園と大差はないだろう。

・・・・・・ん、あれはもしかして?

私は、それを見つけた。
「翼、こっちこっち!」
私は翼の手を掴んで走り出す。
「あ、葵! いきなりまたどうしたんだよ?」
私に引っ張られながら翼が尋ねた。私は自信を持って答える。
「ダイジョブダイジョブ♪ ボクに任せてー!」

 

 

 

続く

 

 



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