【小説・キミと夏の終わり】第一話:ある日の4人

【小説・キミと夏の終わり】第一話:ある日の4人

 

こんにちはなの!モロくんなの!

こっけ~:「モロのかいぬし、こっけ~ですー。今回は先週掲載した小説の続きです」

 

※ 目次はこちら。

 

 

 




 

 

 

キミと夏の終わり

 

 

 

 

第一話:ある日の4人

 

 

 

 

車窓の向こうには、朝焼けに輝く街並み。
電車が街の中心部に近付いてくるのに従って、窓から見える車や人の数が少しずつ増えてくる。
私の乗っている車両にも人が乗ってきた。スーツを着ているからこれから仕事なのだろうか。日曜日の早朝から出勤だなんて、辛いだろうな。
そんな考えが頭をよぎって、今の自分に人を思いやる余裕があることに少し驚く。
私も親友たちや、大スキなキミから離れなくてはいけなくて辛いはずなのだけど。
けれど、それは自分が選んだ道なのだから、その道を恨むのは筋違いというものだ。
終わってからようやく気付いた、青陽学園高校で過ごした毎日の素晴らしさ。
私は目をつぶると、トモダチと過ごした日々を回想する―――

「ねぇ葵ちん~」
「ん、何ー? あやめちゃん」
あれは去年の5月、高校最初の定期テストが近付いてきたある日のこと。
青陽学園高校に入って1ヶ月が過ぎ、私は学校生活にも大分慣れてきた。
「学校の近くに、新しくできたばっかのケーキ屋さんがあるの知ってる~?」
帰りのホームルームが終わってすぐ、一番仲のいいクラスメイトの上田 あやめちゃんが私の机にやってきてそう切り出した。
「ケーキ屋さん?」
「”スター夏味堂”っていう最近オープンしたばかりのお店なんだけど、すっごくおいしいって評判なんだって!」
目を輝かせて熱弁を振るうあやめちゃん。あやめちゃんは背がそんなに高くない私よりも小さいのに食いしん坊で、特に甘いものに目がない。
「へー、そうなんだー」
「ね、今から行ってみない~?」
あやめちゃんの誘いに
「うん、行こー!」
私も甘いものはスキなのですぐに快諾した。美味しいと噂のケーキ屋さん。すごく興味がある。
「さすが葵ちん、話が早い! じゃあ美沙ちんと涼子ちんも誘お~」
あやめちゃんがさらに二人のクラスメイトの名前を挙げた。
神楽 美沙ちゃんは勉強も運動もなんでもできて、そのうえ美人のスーパーウーマン。野球部のマネージャーをしている。
本多 涼子ちゃんは弓道部所属の、クールで気品があるかっこいい女の子だ。
入学してすぐ、新入生オリエンテーション合宿という2泊3日の遠足みたいなものがあって、私とあやめちゃん、そして美沙ちゃんと涼子ちゃんの4人は同じ部屋のメンバーだった。
それをきっかけに仲良くなって以来、私たちはよく4人で行動している。
「そーだね! 美沙ちゃんー、涼子ちゃんー」
私は帰り支度をしている二人に声をかけた。二人も私たちの元へやってくる。
「あら、何かしら?」
「どうしたのだ?」
美沙ちゃんと涼子ちゃんが尋ねてきて、あやめちゃんが二人を誘う。
「あのね、学校の近くにおいしいケーキ屋さんがあるらしいから一緒に行こうよ~!」
「ケーキ屋って・・・・・・あやめ、今日からテスト週間よ?」
美沙ちゃんが眉をひそめる。けれど
「だからだよ~。二人ともいっつも部活で忙しいから、部活が休みになるテスト週間ぐらいしか一緒に行けないじゃん~」
と、あやめちゃんは言った。確かに美沙ちゃんと涼子ちゃんは部活があって忙しいから、なかなか一緒に帰ることができない。
ちなみにあやめちゃんは陸上部に所属はしているものの、ほとんど出ていないらしい。かく言う私はまだ何の部活をするか決めていなかった。
「そーだよー、せっかくだから行こー! テストまでまだ1週間もあるしー!」
私もあやめちゃんに加勢した。テスト週間で部活のない今日は、4人全員で行けるチャンスだ。美沙ちゃんは少し考えて
「それもそうね。今日からは野球部も自主練になるからマネージャーも来るのは自由って言われてるし。涼子はどう?」
美沙ちゃんが涼子ちゃんに話を振った。
「ふむ。最近の放課後は4人揃うこともなかったし、よい機会かもしれないな」
「よし、決まり~! んじゃさっそくレッツゴー!」
あやめちゃんが右手を高らかに上げる。
「おや、上田君。楽しそうにしてどうしたのですか?」
その時、私たちの外から声がした。私はその声の方を向く。
「古川先生!」
声をかけてきたのは、このクラスの担任である古川 裕次郎先生だ。来年定年を迎えるベテランの先生で、いつも穏やかな笑みを浮かべている。
「それは、その・・・・・・」
「今から4人でケーキ屋に行くんですー」
なぜか言いあぐねている美沙ちゃんに代わって私は答えた。その瞬間美沙ちゃんが
「あ、葵! どうして言うのよ!」
小声ながら鋭い口調で私に言って
「はへ? なんで言っちゃいけないのー?」
私はわけがわからなくて訊き返す。
「だって今日からテスト週間なのに、先生に面と向かって『ケーキ屋に行く』だなんて・・・・・・」
「そ、そっか!」
私はようやく美沙ちゃんの言いたいことがわかって、慌てて取り繕うとする。
「はわわ・・・あの、先生、さっきのケーキ屋って言うのはその、間違いで、えっと・・・・・・」
しどろもどろになる私。先生はそんな私を見て優しく言う。
「テスト週間だからといって、気にしなくていいんですよ。世の中には勉強より大切なことがいっぱいあります」
一瞬私たち4人はぽかんとした。あやめちゃんが真っ先に我に返る。
「ですよね~! さすが古川先生、心が広い! よっ、大統領!」
「もっとも上田君の場合はもっと勉強した方がいいかもしれませんですけどね」
「にゃ!?」
あやめちゃん、撃沈。
「古川先生、私たちが言うのもおかしいですが、本当にいいのでしょうか? テスト週間の放課後なのに遊びに行って・・・・・・」
美沙ちゃんが恐る恐る言うと、古川先生は対照的に高らかに笑った。
「はっはっは、神楽君、そんなに神経質にならないで下さい。私は決して皮肉で言ってるわけではありませんよ」
「はぁ」
「高校は何も勉強するだけの場ではないのです。友人たちと過ごすことで得られるものはたくさんあります」
古川先生の言うことは私たちにとって都合がいいことだ。いいことなのだけど
「恐れながら申し上げますが、古川先生の発言はあまり教師らしくないですね」
涼子ちゃんが私たちの気持ちを代表して言った。そう、先生っぽくないんだ。
『勉強より大切なことがある』というのはよく聞く言葉だけど、それを先生が、しかもテスト週間中に言うだなんて。
「例えば本多君。テスト週間だからと家にまっすぐ帰ったところで、その日は一日中ずっとテスト勉強をして過ごしますか?」
先生が問いかけて
「ずっと、ではないですね」
涼子ちゃんは正直に答えた。先生はその回答に頷いて
「そう、それが普通です。教師というものはただただ勉強しろと生徒たちに言い聞かせますが、実際問題それは困難です」
先生の話し方はテンポがよいので引き込まれる。私たちは黙って聞いていた。
「今はまだ高校1年生。せっかくの高校生活なのだから君達には楽しんでもらいたい、というのが私の考えです。もちろん受験生の時ならば考え物ですがね」
古川先生の顔に刻まれたしわがくしゃっとなった。
「やっぱり先生って、先生っぽくないね~。 ・・・・・・あ、そだ! 先生も一緒にケーキ屋行きませんか~?」
「私がですか?」
あやめちゃんの誘いに、先生が目を丸くした。
「私が混じったら、ケーキも美味しくなくなりますよ」
「そんなことないですよ~」
「お誘いは嬉しいですが、今日はまだ仕事が残っているので遠慮しておきます。ところで、なんという名前のお店ですか?」
「スター夏味堂、っていうできたてほやほやのお店です~」
あやめちゃんが答えると、いつも笑顔の古川先生の顔が、ほんの一瞬だけ固まった、様な気がした。
「・・・・・・スター夏味堂、ですか。なるほど・・・・・・」
先生は何か考えているようだったが
「それでは、楽しんできてくださいね」
すぐにいつもの笑顔に戻った。私の勘違いかもしれない。
「はい、それでは失礼します」
涼子ちゃんが代表して答えて、私たちはケーキ屋を目指した。

 

 

 

「んでもって到着~」
学校から歩いて10分。私たちはケーキ屋の前にいた。
「”スター夏味堂”か。そう言えばお姉ちゃんもいいお店だって言ってたっけ」
お店の看板を見ながら、思い出したように美沙ちゃんが言う。美沙ちゃんには2つ上のお姉さんがいて、私たちと同じ高校に通っているって前に言っていた。
「おしゃれなお店だねー」
私は思ったままを口にした。まだできたばかりと一目でわかるそのお店は、駅前商店街を一本曲がった道にあった。
古い建物が多い路地の中、スター夏味堂はそこだけ周りとは違う世界のようで、メルヘンな感じが漂う。
「そうね、きっと北欧のログハウスをイメージして造られているのでしょう」
お店の外観を見て美沙ちゃんが言った。北欧がどんな感じなのかはよく知らないけど、美沙ちゃんが言うのだからそうなのだろう。
「ね~、早く入ろうよ~」
「そんなに急がずとも、ケーキは逃げていかぬぞ」
待ちきれない様子でドアの前にいるあやめちゃんを見て、涼子ちゃんが苦笑する。しかし、あやめちゃんがせかした。
「それがここのケーキは逃げちゃうんだよ~、早く行かないと売り切れになっちゃうんだから!」

 

 

 

「ほら、危なかった~」
私たち4人はそれぞれケーキを買って、4人がけのテーブルに着いた。
店内は天井も壁も床も、全てが木で造られていて、大きめの窓から取り入れた光のおかげで明るい。
ケーキ屋さんだから当たり前なのだけど、甘い匂いがお店に充満している。
席数は決して少なくはないのだが、既にほとんどの席が青陽学園高校の学生で埋め尽くされていた。
「これが最後のショートケーキだったよ~、ギリギリ~」
あやめちゃんのプレートにはショートケーキとミルクティー。
「よかったねー、あやめちゃん」
「ホントよかったにゃ~、ショートケーキはここのお店一番の人気商品なんだよ~」
とあやめちゃんは教えてくれた。ちなみに私が頼んだのはミルフィーユとホットココア。
「それにしても店内は青陽学園高校の生徒ばかりね、テスト週間だっていうのに」
少し呆れている美沙ちゃん。プレートの上にはフルーツケーキとレモンティーが載っている。
「美沙ちんは真面目すぎるんだよ~。テスト週間だからこそ、こうやって楽しいことしないとやってらんないよ~」
「それに脳を働かせるには糖分がよいと聞く。一概に否定はできまい」
抹茶ケーキとウーロン茶を前にして、涼子ちゃんも賛同した。
「その糖分が脂肪にならなければいいのだけれどね・・・・・・」
「何言ってるの~! 美沙ちゃんはプロポーション完璧でしょ~! それに比べてあたしは・・・・・・」
美沙ちゃんのつぶやきに、あやめちゃんが自分の体を眺めていった。
背が高くてスタイル抜群の美沙ちゃんと比べて、150cmにも満たないあやめちゃんは小学生でも通用しそうだ。
「あやめちゃんと美沙ちゃんは同い年に見えないねー」
「にゃ!? 葵ちんひどい~!」
私が思ったままのことを口にすると、あやめちゃんは頬を膨らませた。
「あやめだってすぐに大きくなるわよ。それより早くいただきましょう?」
美沙ちゃんがそう促して
「そだね、いっただっきま~す!」
あやめちゃんはあっという間に機嫌を直して、自分のショートケーキへフォークを刺した。私も自分のミルフィーユに刺す。
「いただきまーす!」
適度な大きさに切り分けたミルフィーユを一口。
「・・・・・・おいしー!」
それはとても美味しかった。甘さが口いっぱいに広がり、だけどくどすぎない絶妙なバランス。みんなも
「にゃは~! このショートケーキさいこ~!」
「このフルーツの酸味がたまらないわ」
「うむ、抹茶の風味が効いていて、とてもよいな」
自分のケーキに満足しているようで、口々に賛辞の言葉を贈る。
私たちはお互いのケーキを交換しながら食べ進めていった。
「ね~、このお店美味しいでしょ~?」
「うむ。洋菓子というのもよいものだな」
「えぇ、確かに来てよかったわ」
涼子ちゃんと美沙ちゃんが答えたその時。
「メルシー、マドモアゼル」
テーブルの外から流暢な外国語が聞こえた。私は声の方を向く。
「なんてね。いきなり口をはさんでごめんね」
そこに立っていたのはエプロンに身を包んだ女性だった。
「あなたは・・・?」
「はじめまして。私は星野 菜摘、このお店の店長よ」
美沙ちゃんの問いに、爽やかに笑みを浮かべた女性はそう答えた。涼子ちゃんが尋ねる。
「星野さんがここのケーキを作られているのですか?」
「えぇ、そうよ。あ、そんなに固くならないで。私のことは気軽に、菜摘さんって呼んでくれるかな?」
菜摘さんがスター夏味堂のケーキを作っていると聞いて、あやめちゃんは顔を輝かせた。
「菜摘さん、このショートケーキとっても美味しいです! ほっぺた落ちちゃいました!」
「ふふ、ありがと。ショートケーキは一番力入ってるからね。あ、他は手を抜いてるって意味じゃないよ?」
「本当に美味しいです。どうしたらこんなに素晴らしいケーキを作ることができるのですか?」
美沙ちゃんが菜摘さんに尋ねると
「うーん、気合いかな」
予想外の答えが返って来た。
「え、気合い・・・?」
「なんてね、でも頑張って練習すれば誰だって上手くなれるよ! 私だって最初は下手っぴだったし」
と茶目っ気たっぷりの菜摘さん。陽気な人だ。
私たちはその後も美味しいケーキを食べながら、店長の菜摘さんとお話した。

 

 

 

「ごちそうさまでしたー」
ホットココアを最後まで飲み終わって、私は手を合わせた。
「美味しかったわね」
美沙ちゃんが上品に口を拭いながら言って
「またみんなで来よ~!」
あやめちゃんが提案する。
「うむ、このお店にはまたぜひ訪れたいものだ」
涼子ちゃんも気に入ったみたいだ。菜摘さんはさっきお仕事に戻ってしまった。
「そーだね! あ、そうだ、翼にもこのお店教えてあげよーっと」
私はトモダチの名前を口にした。初めて仲良くなったクラスメイトの翼にも、ぜひ教えてあげたい。
その時、翼という名前を聞いて美沙ちゃんが私に訊いた。
「ねぇ葵、翼ってもしかして、クラスメイトの中田 翼君のこと?」
「うん、そーだよー」
私が答えると、美沙ちゃんはなぜか渋い顔をした。
「こういうのは陰口みたいだから嫌なんだけど・・・・・・でも葵が心配だから言うわね」
美沙ちゃんはそう前置きして
「中田 翼って中学時代女癖が悪くて何股もしてたらしいわ。だから葵もあまり関わらない方がいいわよ」
そう私に言った。意味を理解できない私が口をぽかんと開けていると、あやめちゃんも
「中田君ってよく葵ちんと話している人だよね? あ~、確かにイケメンだから遊んでそうだね~」
「そ、そんな。翼はそんな人じゃ、ないよ」
心外だった。翼はいつも私に優しくしてくれるし、そんな人には到底思えなかったからだ。しかし、美沙ちゃんが噂の内容について詳しく説明する。
「だけど、中田君と同じ中学だった子から聞いた話だから間違いないと思うわ。それに、私も入学式の日早々に声をかけられたし」
「おっと美沙ちん、それは遠まわしに自分がキレイって言ってるぞ~」
「あやめ!」
笑いながらからかっているあやめちゃんと、そんなあやめちゃんに怒る美沙ちゃんを見ながら私は考える。
翼が私に声をかけてくるのは、女の人なら誰でもいいと思ってるからなんだろうか。
「でも違うと思うなー。だって美沙ちゃんならまだしも、ボクに声かけるくらいだしー・・・・・・」
私がそう言うと、3人は急に黙った。そして
「葵、いくらなんでも自覚がなさすぎるぞ」
「そだよ! 葵ちんはそんじょそこらにいないくらい、すっごくかわいいんだから~!」
「そして自覚がない辺り、男性受けがいいのかもしれないわね」
私に一気にまくし立てた。
「はわわ、ボクはか、かわいくなんてないよ! 髪だってすっごく短いし、おしゃれも全然しないし・・・・・・」
しかし私が言い終わらないうちに
「葵、本当に自覚がなさすぎるぞ」
「そだよ、葵ちんはそういうところが逆にポイント高いんだよ~!」
「そして何もしなくても可愛く見えるあたり、男性受けがいいのかもしれないわね」
3人から一斉にまた反論の嵐。
「・・・・・・」
なんて言えばいいかわからない私が黙っていると、美沙ちゃんはそんな私を見てもう一度言う。
「とにかく中田 翼は女癖が悪いから危険よ、関わらない方がいいわ」
私は考える。美沙ちゃんはそうは言うけど、でも私には翼が危険な人だなんて思えない。だから私はこう答えた。
「美沙ちゃん、教えてくれてありがとー。でも翼はいい人だから、ダイジョブダイジョブ♪」
笑顔で答えた。すると3人は呆気にとられたような表情で私を見る。
「えっと・・・・・・どーかした?」
「・・・・・・葵は、すごいな」
「なんかもう葵ちんのこと尊敬するよ~」
「そしてそういう天然な辺り、男性受けがいいのかもしれないわね」
よくわからないけど、また褒められた。

目を開けると、いつの間にか電車の中に乗客が何人か増えていた。
どうやら周囲の変化に気付かないほど、私は昔のことを思い出すのに没頭していたらしい。
電車はもうすぐ終点の豊徳駅に着く頃だ。その駅で私は最初の乗り換え、新幹線に乗り換える。
私は、今しがた考えていたことを思い返してみた。
初めてスター夏味堂へ行ったあの日、美沙ちゃんは 「中田 翼って中学時代女癖が悪くて何股もしてたらしいわ。だから葵もあまり関わらない方がいいわよ」 と私に忠告した。
私は翼がそんな人だなんて信じられなかったけど、美沙ちゃんは何の根拠もなしにそんなことを言う人ではない。
事実、後になってわかったことだけど翼の女癖が悪いというその噂は本当のものだった。だけど―――
がくん。
突然電車が大きく揺れて、私は思考を中断させられた。私は驚いて辺りを見渡したが、他の乗客は平然としている。どうやらよくあることらしい。
電車が減速してホームに入る。窓からは高層ビルが何本も見えた。
豊徳駅には何度も来たことがあるけど、この辺りはやっぱり都会だ。地方の中心駅となっているだけある。
<お忘れ物ないよう、ご注意ください>
車内アナウンス。私は肩にかけている、少し大きめのかばんの肩紐をしっかりと握る。
そして、電車の外へ踏み出した。キミのいる、この街を離れるために。

 

 

続く

 

 



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